では、トイレ空間はどうだろうか。
N館と同じく、本館も共用部が東の開口部に面しているため、自然光が降り注ぐトイレが実現できるのは幸いだが、プランを見て気づくのは、共用部に占めるエレベータの面積。それもそのはず、ホテルとオフィスは動線を分ける必要があるうえ、オフィスが高層化したことでバンク数も増えている。しわ寄せは当然、トイレなどの共用スペースにおよぶわけだ。
「いかに残りの隙間にトイレをうまく無駄なくレイアウトし、かつ外光を取り入れるかが課題でした」と熊谷さんが言うとおり、男女トイレとも、じつに細長く、しかも奥が鉤形に折れ曲がった変形スペースに配されている。
あまりウナギの寝床のようだと快適性も損なわれそうだが、実際に見ると、どのコーナーも違和感なく納まっており、狭さも感じられない。男女用とも廊下からしばらく同じカーペット仕上げの床が続き、途中から床材が変わってオープンなトイレがつながっており、一直線ではなく適度にクランクもあるため、あまり通路状という印象はせず、奥の鉤形の部分も適度なコーナー分けにひと役買っている。
とくに、N館に比べて快適性が増したのは女子トイレ。N館では手前が洗面コーナー、奥が大便器ブースという配置上、せっかくの奥の開口部からの光が洗面コーナーまでは届かなかったが、本館では鉤の手に曲がった右奥にブースを配置したので、洗面コーナーとは別に、東の窓際に専用のパウダーコーナーを設けることができたのだ。
もちろん、洗面コーナーも照明を仕込んだ縦のラインで鏡をうまく仕切って、ほどよい明かりで落ち着いて化粧ができるよう配慮しており、パウダーコーナーとしても十分使える。洗面カウンターには一段高いドライエリアを設けた、TOTOのツインデッキカウンターを採用。棚に置いた荷物がぬれる心配がないうえ、奥行きが浅いので、より鏡に近づいて化粧できる。「限られた空間では、省スペースになる点も魅力でしたね」と富岡さん。




