藤森照信の「現代住宅併走」

「新座の家Ⅰ」設計/益子義弘

自然に帰る家

 埼玉から東京に向かって伸びる狭山丘陵が平地に向かって迫り出したちょうど突端の斜面に、益子邸はある。開口一番、益子義弘さんのあいさつは、「藤森さんが取材に来るなんて、思いもよらなかった」。確かにこのシリーズはこれまで、トンガッタ住宅ばかり取り上げてきたし、日頃私の付き合う建築家も、トンガリ命(いのち)。
 でも私には、トンガリとは別にもうひとつテーマがあって、自然との関係の問題である。自然と親しみながら暮らす建築家の住まいには長いこと着目してきて、そのナンバーワンは名古屋の津端修一夫妻(創草期の公団住宅で活躍)。羊まで飼って、ホームスパンを楽しんでおられる。そして、近年、庭に来る小鳥についての文を読んで、益子義弘・昭子夫妻の住まいに関心をもったのだった。もちろん、益子さんが建築家としては、吉村順三の流れを汲むことはよく知っていたし、住宅以外の代表作の「杉の森の火葬場」(1995)も見ている。でも、住宅は初めて。

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