
2000年、この家は増築された。もう少し大きなアトリエスペースが必要になったからという理由と、もうひとつ、双子のお嬢さんたちの部屋への要望に応えるため。主寝室が子どもたちに譲られ、縁なし畳を中央に敷いた和風モダンの主寝室とアトリエ兼用の大きな部屋が庭先に増築された。付属する2階建ての納戸。そこには朝の混雑時のための家族用のトイレも設置されている。
その設計の基本姿勢はまったく変わっていないようにみえる。家具も置かれていないこの部屋はちょっと見たところではその用途を確定しにくい。
ミニマルな表現に過剰な生活用品の存在はいうなれば敵だろう。整理が行き届かないとミニマルな空間は生きてこないのは周知の事実だ。納戸は2階建てで、かなりの収納スペースが確保されている。中をのぞかせてもらったけれど、内部もまた整理整頓され、物の過剰は抑えられている。奇跡的な表現の継続がこの家にはある。とはいえここに暮らす家族のこの家への強い愛着がなかったらこうはなっていなかっただろう。施主の西垣さん一家の愛情が、この家の表現を今も守っている。
この増設された空間はおおらかだ。6.5m×3.5m。壁付けされたミニマルそのものの銀色の四角い箱。壁に取り付けられたこの箱、じつは仏壇。真四角。把手は小さくあけられた穴。ミニマルの基本言語だ。家具のデザインは、さらなる進歩を示しているというべきか、明確に意識化されたミニマリズムだ。西宮さんの変わらぬデザインへの姿勢はますます強固に確立されているというべきだろう。もうひとつの床置きの収納も同じようにデザインされている。素材はやさしい無垢材でデザイン言語も同じ。それ以外には何もない。玄関脇の空間と広間と名づけられたリビングに直接つながっている。開け放てば完全なワンルームになる。




