特集3/ケーススタディ

あいまいさの魅力

 西宮さんの発表されたプランを見るとおのおのの空間は、名前こそつけられているけれど、住み手の「使い方自由」が基本にある。この部屋は何に使うのか、図面だけ見てもはっきりしない「あいまい」なところがある。増設された部屋もそうだけれど、既存部分の2階に上がったところはどうにでも使える自由な空間。室名は設計者のサービスというだけではないかと勝手ながら思う。
 少なくとも西宮さんのミニマリズムは突きつめていくと、空間設定は住み手側の自由にまかせるというセオリーが存在するのではないかと推測できる。西宮さん自身、「空間を『あいまい』にしておくことを意図している」と言う。
 空間そのものを限定しないことは、もしかしたら西宮さんのミニマリズムを支えているもうひとつの基本的な欲求なのだといってもいいだろう。
 つくり手は定義には無関心にちがいないけれど、こちらが勝手に西宮さんの設計手法をくくるとすれば、やはりこれは徹底したミニマリズムといえるだろう。
 唯一例外は、リビングの庭に面したところ、ベンチ状に張り出したコンクリートの端の「はつり」にあるかもしれない。何かをするか、何もしないか。「悩んだ」と言うことだけれど、これはまさしく80年代の時代性の名残を示す美意識だろうか。ここにくっきりとした時代の表情を見てしまった。台所を隠す屏風状のパネルにも同じことがいえるかもしれない。
 勝手ながら作品数の少ない西宮さんの新しいミニマリズムを見てみたい気がする。

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