特集3/ケーススタディ

ディテールの徹底と軽さ

 20年前の焼山の家。何が記憶に残っているかといえば、まずはすばらしくシャープだった印象。四角い単純な箱、その上にのせられた片流れの屋根、浮き上がった屋根の下に開けられた光の取り込み口。庇も雨樋も消されている。
 ローコスト住宅ではあるけれど、すみずみまで配慮されたディテールの積み上げが基本にある。そんなことを書くのも取材者としては、20年前のあのとき見えていなかったものがけっこうあるなという反省があるからだ。一般誌読者が対象だったから、ディテールを語ることは不要だったといえるかもしれないけれど、なぜこの家がそんなにも記憶に残っているのか。自問自答していた自分がいる。
 通りから見た家の印象はかなり変わっていたといっていいかもしれない。前庭が消えていた。手前に増築があるから、その向こうの庭は見えない。増築部は波板で覆われている。1層の畳の大部屋の外壁は銀色の波板。手前に見える納戸部分は2層で用途の違いで黒に塗りわけられている。

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