特集1/対談

懐の深いミニマル

―― 鈴木さんは歴史家の目から、ミニマルな建築というのをどうとらえていらっしゃいますか。
鈴木 やはり、スカッとしているというか、明快な空間というイメージがありますね。ただ、ミニマルな空間というのは、ある程度のスケール感がないと成立しないのではないでしょうか。ミニマな空間と、ミニマな空間は全然違うわけで、ある意味では対極ですよね。ミニマムな空間にしようとしたら、茶室みたいに、いろんな中柱が出てきたり、踏込みがあったり棚があったり、コックピットみたいになっていくんだろうと思う。ミニマルな空間のおもしろさというのは、体育館では困る。そこはすごく難しいと思うんですよね。スケール感があって、なおかつ体育館じゃない、スカッとした空間。それは非常に難しいものだけれども、成功すればすごく気持ちのいい空間で……。だから、つくる側でも、クライアントの側でも、求める方がおられるというのは、すごくよくわかるような気がします。チャレンジしがいのあるテーマだし、それが獲得できたときの心地よさというのは、とても大きいものがあるのだろうと思います。
小川 何か、ものがなくても成立している空間、生命がある空間であってほしい。生命がそこにあると、何もものがなくても、いい空間だし、ものが置かれていても全然動じない……。
鈴木 うん、空間が壊れない。
小川 そうですよね。そういう幅のある、懐の深いものであってほしい。ディテールを見せないために努力しているつもりなんです。何か、見せていくと、ものを置くときに、いつもそれとの関係性ができてくるような気がする。それよりも、自然の緑とか光を大事にして、風が通るようにということを考えます。
鈴木 そう、ある時期までの上質な和室というのは、ミニマルな空間だったんでしょうね。だからあるものはケンカせずに置けるし……。
小川 いろいろなものをもってきても大丈夫という感じがしますね。空間のクオリティが高いものであれば。
鈴木 ひとつうかがいたいんですが、住宅の建築タイプと、ほかのタイプ……オフィスであれ、美術館であれ……そのへんの関係はどうお考えになっていますか。空間のタイプというのを、ひとつの原形をイメージしながらバリエーションをつくっておられるのか。それとも、住宅というのは、やはりひとつの特殊なタイプとお考えなんですか。
小川 全部つながっていると思いますね。基本的に、私の好きな空間をつくっている感じですから、変わらない部分は変わらないかなと。敷地からインスピレーションを受ける部分が非常に大きいので、プロトタイプという意識もあまりない。好きな空間はいろいろあって、ひとつではないという感じです。
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