
- ―― 小川さんの建築は、初期の頃から一貫したイメージがありますね。
- 小川 ええ、独立した80年代後半というのは、デコン(Decon・structivism 脱構築主義建築)とか、ポストモダニズムとかの全盛期でしたが、「キュビストの家」(89)や「ミニマリストの家」(90)をつくっていたので、昔からそんなに変わっていないんです。
鈴木 基本的にヴァナキュラーなスタイルではなくて、グローバルというか、インターナショナルなスタイルを貫かれたという感じですよね。
小川 近作やプロジェクトの図面をまとめてきましたが、だいたい、ほかの平面図とかは、こんな感じで……。平面を見ていただくと、収納だらけです。
鈴木 非常に明快ですね。それで、収納が多いというのは空間的にはぜいたくなんですよ。
小川 超シンプルなので、コストも意外と安くなります。工務店も最初はちょっと戸惑ったりされるんですが、2回目からは、あのパターンですね、みたいな感じで受けてくれます。
鈴木 それは、システムが明快だからでしょうね。ディテールの部分というのは、ある程度、標準化されているんですか。コンセントの取り合いとか、照明の考えとか……。
小川 そうですね、多少は違いますけれど。それと全体、平面の考え方との整合性がほしいと思っていて、そこに時間をかけます。
自分のつくりたい建築というのは、ミニマルなだけでは満足できないんです。「ミニマルとマキシマルを相互に横断する住居」(『小川晋一/見えないディテール』ディテール2008年10月号別冊所収/彰国社)という文でも書いたのですが、両面性を実現したい。ミニマルな部分も、何か汚した部分もある。生活であれば、田舎も都会も両方楽しみたい。料理なら和風もフレンチも、音楽ならジャズもクラシックも。一元的に生活したくないという気持ちがあって、いろんなことが選べるような空間を考えています。
鈴木 何も置けないというのではなくて……。
小川 はい。ストイックな空間だけをイメージされることが多いんですが、実際は許容力があると思います。人間が衣替えをするように、ものが変わると中の雰囲気が変わるというぐらいの空間にしたい。とにかく空間のボリュームをつくることに、お金をかけたいという思いがあります。
鈴木 結果的にミニマルなものが出てくる、という感じなんでしょうね。
小川 ええ、そう思います。今、週の前半が東京で、後半が広島という生活なんですね。ちょっとつらいところもありますが、これも両面を楽しんでいる感じです。




