特集1/対談

「36m」のつくり方

―― ここで、小川さんの実作にお話を移したいのですが、先日、近作のひとつである「36M HOUSE」(07)を拝見しました。想像していたスケールよりずっとゆったりしているのが印象的でしたが、小川さん、少しご説明いただけますか。
小川 これがコンセプト模型で、ガレージ、コート1、リビング・ダイニング・キッチン、コート2(プール)、子ども室、多目的室、コート3、主寝室と、36mを見通せるわけです。そして36mの廊下があります。
鈴木 へえ! いや、これはすごいなあ。
小川 10m×36mの平屋で、空間としては仕切られているので暑さ寒さは防ぎながら、南の光が入ってきます。全体は囲まれているので、プライバシーは守られています。こういう敷地ですから、そのポテンシャルをきちんと生かした空間をつくりたいと思いました。
―― 天井高を2.4mくらいのつもりで見ていると小さく思えますが、実際は3mあります。またドア引手の位置が、その半分、1.5mのところにある。私の肩のあたりです。
小川 いや、最初の計画では天井高は3.6mで、もっと天井の高い空間をつくりたかった。こういうスケール感というのは、私が育った環境もあるんですかね。祖父の代は、造り酒屋をやっていたので、天井も高くて大きな家でした。
鈴木 なるほど、そうですか。これ、床は石ですか。
小川 トラバーチンです。建主さんがたいへん建築が好きな方で、ミースのバルセロナ・パヴィリオンみたいにと。
鈴木 いやあ、スカーッとしてて、気持ちいいだろうなあ。
小川 そうですね。照明器具なども全部、つくっています。ダウンライトは普通、フレームが見えるじゃないですか。消したときに見えなくなるように、パイプを埋め込んでそのエッジだけが見えているんです。コンセントプレートは石をはずして床下に納め、スイッチプレートはカバーを製作しています。なるべく目立たないように。
 収納はけっこう設けてあります。かなりの壁面が収納になっていて、全部、隠せます。でも、パッと開くとオープン棚のように全部見える。で、人が来たら、バッと全部入れてしまう(笑)。
鈴木 そうですね、そうやって、いかにきれいに収めるかを考えないと、この空間は成立しませんね。この資料に写っているのは、実際のご家族ですか。
小川 ええ、そうです。お子さんが4人いて、子ども室にもベッドを納めた収納があります。
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