使い勝手と美しさを追求しフルモデルチェンジ。新生活様式も反映した洗面化粧台に
TOTOの「オクターブ」は、機能と衛生性、清掃性に優れる洗面化粧台として幅広いお客様から人気の商品です。発売以来、寄せられてきたお客様の声をもとに、2022年8月、今の暮らしにさらに寄り添う形にフルモデルチェンジ。デザインや清掃性、使いやすさのブラッシュアップなどの課題に取り組んできた、佐藤望さんに開発の経緯や商品の魅力などについてうかがいました。
2022年8月23日
2023年8月1日
#洗面プロモーション
現在、洗面化粧台は、歯を磨いたり、手や顔を洗ったりするほか、メイクなどもする場になっています。そのような使い方やニーズの変化に対応して進化を続けているのが、TOTOの最上位クラスのシステムドレッサー「エスクア」です。2023年8月には洗面空間全体のトータルコーディネート提案の幅を拡充し、カウンターやバックパネルに新柄を投入。照明操作もタッチレス化し、より上質で居心地の良い洗面空間へと歩みを進めています。従来の洗面化粧台からどのように進化しているのか、開発に携わった西村夏子さんに語っていただきました。
キッチン・洗面開発第二部 洗面開発グループ
西村 夏子 さん
同志社大学で機械工学を専攻。2018年入社後、洗面化粧台の化粧鏡・照明担当として新商品開発業務に携わる。
2017年の発売当初の「エスクア」のコンセプトをお聞かせください。
西村さん(以下、西村) それ以前にあった最上位機種をいちから見直して、洗面所を「上質で居心地の良い、温かみのある空間」にするという目標がありました。
開発にあたってのポイントは?
西村 まず大きな変更点は照明をスリム化することでした。エスクアのコンセプトに合うような上質な空間づくりのため、その意匠に合う照明が求められました。また、スリム化だけではなく、空間を演出できる照明をつくる必要もありました。そこでヒントになったのが、市場調査などで洗い出された従来の照明の課題でした。
どんな課題があったのですか?
西村 従来機種では照明は鏡の上部のみにあり、上から照らす形でした。顔や手を洗うだけならそれでもいいのですが、たとえばメイクをする場合などには、上から光が当たるとどうしても目や鼻の下などに影が出てしまいます。スキンケアしていても肌の質感が見えにくいですし、化粧のノリなどもわかりにくくなりますね。
そのような課題を解決するため、鏡の上部と下部の両方に照明を設置して、下からも光が当たるようにしたのです。
それなら影が生まれにくいですね。
西村 はい。そして、上部と下部の照明は、それぞれ上下に光が出るようにしています。下向きの光は顔や手元を照らすための明るい光、上向きの光は空間や顔を照らすためのものです。下部ユニットから照らす上向きの光は、照度を抑えることで、目に入ってもまぶしくないようにしました。
洗面所の空間を照らす照明とは、これまでにない発想ですね。
西村 洗面所をホテルのような上質で温かみのある空間にしたい、という狙いがありました。照明は洗面化粧台の使い勝手をよくすると同時に、空間演出の効果もあります。
エスクア全体に、スリムで洗練された印象があります。
西村 従来機種はカウンターの天板の厚みが約40mmでしたが、エスクアでは約12mmにまで薄くしました。また蛍光灯より光源が小さいLEDを使うことで照明も従来よりスリムにしました。その結果、洗面化粧台全体としてすっきりとしたデザインに仕上げることができました。そのほか、光を透過するすりガラスのような美しい素材と輝きが魅力のクリスタルカウンターや、浮遊感のあるフローティングキャビネットなどのバリエーションも追加しました。ホテルのような高級感を求めるお客様にも、きっとご満足いただけると思います。
照明をスリム化するにあたって苦労されたことは?
西村 照明部分をスリムにすることで、光の「粒見え」の問題が出てきました。
「粒見え」とは?
西村 照明の内部には光源となるLEDをいくつも並べて設置しています。照明自体がスリムになると、カバーと光源との距離が近くなるため、LEDの光源の形がそのまま「粒」のようにカバーを通して透けて見えてしまう。この現象のことを粒見えと呼びます。そうなると、光としてひとかたまりに見えず、照明の光がきれいに見えにくいのです。
どのように解決しましたか?
西村 照明カバーを厚くしたり、照明ユニットを大きくしたりすれば、光源からカバーまでの距離がとれ、粒見えは解消できますが、そうなると照明のスリム化が難しくなります。そこで、光源からの距離を変えた試作品をいくつもつくって、スリム化を実現しつつ、粒見えのないぎりぎりの距離を検討しました。
先にうかがった、ひとつの照明部分から上下に光を分けて出すというのも難しそうですね。
西村 蛍光灯は全体が光って広い範囲に拡散しますが、LEDは光の広がる範囲がある程度限られています。洗面化粧台を使う人がまぶしくないように、でもしっかりと光が届くように、どのような角度で光源を設置するか、光をどのように出すか、これも悩みどころでした。
上と下、それぞれに光の明るさが違うのですね。
西村 照明ユニット内部のLEDの光源は下向きに設置しています。上部ユニットでは顔を、下部ユニットでは手元を明るく照らすためです。そうすると、どうしても上向きの光が弱くなってしまいます(図参照)。そこで、照明部分のカバーの内側を白くし、光を反射しやすくしました。その分、上向きの光を効率よく明るく、照明としてもバランスよく光を配分できたというわけです。
光は2種類あるそうですね
西村 従来の昼白色のほか、温白色を加えました。昼白色の光で照らすと物の色みがはっきりするのでメイクなどに向く一方、温白色の光は温かみが感じられてほっとするんですよね。お風呂上がりに落ち着いた空間で、リラックスしてスキンケアなどができるのでお勧めです。
お客様の反応はいかがですか?
西村 お客様のアンケートでは、商品を選んだ決め手として、この上下LED照明を挙げてくださる方もいらっしゃいます。昼白色、温白色もうまく使い分けているようですね。
エスクアはその後、2021年にデザインのバリエーションを増やし、水栓のタッチレス化を実現しましたね。今回(2023年8月)のリニューアルにはどのようなポイントがありますか?
西村 いちばん大きいのは、コロナ禍を経て、より衛生面への配慮が求められるようになったことですね。そのため、今回は照明もタッチレスで点灯・消灯、昼白色と温白色の切り替えをできるようにしました。
水栓に続き、照明もタッチレス化したのですね。
西村 まず直面した課題は、照明を操作するセンサーを洗面化粧台のどこに設置するかということでした。お客様が自然に手を差し出す位置はどのあたりなのか、社内でモニターを募って、実際の動きを検証しました。
人によって手を出す動きは違いがありそうですね。
西村 そうなんです。特に気を付けたのが、ハンドソープなどを使うときに誤ってセンサーが検知してしまうこと。手を洗いたいだけなのに、そのたびに照明がついたり消えたりしていては結構なストレスになりますよね。ですから、センサーの範囲内であっても、他の作業で手がさっと通ったくらいであれば、反応しにくいように設定しています。
センサーが検知する範囲のほか、時間についても検証されたのですね。
西村 センサーは対象からの光の反射量で反応するので、色白の人と日焼けした人とでは反応が違ったりします。センサーに水が付着すると誤作動するおそれがあるので、水の飛び跳ねない位置に配したり…。繊細な検証でしたので、微調整を繰り返して、それだけで述べ1か月くらいは費やしました。
照明のタッチレス化の開発は、コロナ禍真っ只中の時期ですね。
西村 そうです。社内の他の部署や協力会社などとの打ち合わせも、ほぼオンラインでした。検証の様子を動画におさめて意図を伝えることもありましたね。試作品を前に一緒に話ができればすぐにわかってもらえるのにと、もどかしく思ったことが何度もありました。
それだけ夢中になっていると、なかなか仕事が頭から離れないのでは?
西村 店舗などに立ち寄ったとき、洗面化粧台の水栓にセンサーがあると、「どのくらいの検知距離なのかな」とか「どのくらいの反応速度なのかな」とか、気になってしまいます。実家に戻ったときも洗面化粧台を前にすると、ついつい劣化の度合いや水のかかり具合などを確かめてしまったり。
西村さんご自身はどこでメイクを?
西村 私はリビング派です(笑)。賃貸住宅に住んでいて洗面所が狭いということもありまして…。新商品のエスクアのように椅子を置けるのであれば、もちろん洗面化粧台のほうで座ってメイクします(笑)。
今後、洗面化粧台はどんな進化をしていくと思われますか?
西村 鏡に映った顔色や体温、脈拍などをセンサーで検知して健康管理するような機能はいつか実現しそうな気がしますね。ただ、お客様のニーズを追いかけるだけでは、他社と横並びのものしかできません。TOTOらしさをどこで出せるか。潜在的に求められていることを見つけにいく姿勢が大事になると思っています。
編集後記
これひとつ置いただけで毎朝の支度が楽しくなる、洗面所がセンスアップする、そんな洗面化粧台を新築やリフォームの際に探す人は多いのではないでしょうか? 新たなエスクアは照明まわりを丁寧に改良することで、鏡を一層見やすくし、空間を程よくライトアップするなど、まさに洗面所を魅力的な場所にしてくれる逸品となりました。取材を機に照明に関わる様々な工夫や検証についてうかがい、エスクアの持つ魅力に納得。皆さんも、ぜひショールームでこの魅力を体感ください。
編集者 介川 亜紀
取材・文/渡辺 圭彦 写真/後藤 徹雄(特記以外) 構成/介川 亜紀 2023年8月1日掲載
※『快適はヒトの手から~開発ストーリー~』の記事内容は、掲載時点での情報です。
次回予告
次号でご紹介するのは、ウォシュレットⓇの最上位機種「アプリコット」。発売以来、徐々にブラッシュアップを重ね、2023年8月発売の最新バージョンでは既存の特長を守りながら、さらなるラグジュアリー感と便器との一体感を実現しました。実現に向けたきめ細かな工夫と開発秘話を担当のデザイナーに伺います。
2023年9月25日公開予定。ご覧いただきまして、ありがとうございます。
これからの『開発ストーリー』を充実させたく、皆さまのお声をお聞かせください。
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