2022年10月11日
#キッチンプロモーション
2022年8月、TOTOのキッチン「ザ・クラッソ」がモデルチェンジしました。2020年の発売以来の開発コンセプトである「美しい、使いやすい、きれい」をそのままに、さらなる進化を果たしました。特にTOTO独自のクリスタルカウンターには2色の新柄が加わり、キッチンをより明るく気持ちの引き立つ場所へと演出することに。そのほか、タッチレスの水栓や大容量の収納キャビネットで使いやすさが高まったザ・クラッソ。メインアイテムであるクリスタルカウンター(柄入り)を中心に開発、デザインに携わった嘉嶋美奈子さん、大栗麻子さんに注目のポイントや開発秘話をうかがいました。
※ 撮影時のみマスクを外しています
キッチン商品開発グループ
嘉嶋 美奈子 さん
大学で建築学を専攻。2005年入社後、お客様の声の収集・住宅会社への商品提案などを担当。2015年よりキッチンの商品企画、その後開発に携わる。カウンターや扉など、色柄に関する部材を主に担当。
第一デザイングループ
大栗 麻子 さん
大学でプロダクトデザインを専攻。2009年入社後、6年にわたりSRやカタログといった販促デザインに携わる。2017年よりキッチンのプロダクトデザインを担当。色柄に関する部材の商品企画とデザインに携わる。
「クリスタルカウンター」には、新たにインテリアに調和する2色が登場。新しい生活様式にフィットする「タッチレスの水栓」も登場し、使いやすさがさらに進化
どのような特長のキッチンなのでしょうか?
嘉嶋さん(以下、嘉嶋) ひとことで言えば、美しさと使いやすさを兼ね備えたキッチンです。2016年に発売された「ザ・クラッソ」が現在のようなスタイルにフルモデルチェンジしたのは2020年のこと。「システムキッチンとはお客様にとってどんなものか」という原点に立ち戻り、私たちがお客様に期待されているのは、安心して選べて、安心して使えること、そして「水まわりに強い」ことという結論にたどりつきました。そうして生まれた開発コンセプトが「美しい、使いやすい、きれい」です。
キッチンに求められる要素が簡潔にまとめられていますね。
嘉嶋 まず美しさとは何かということですが、私たちは「暮らしに調和すること」ととらえました。空間調和の妨げとなる要素を取りのぞいた「ノイズレスデザイン」という発想になっています。余分な凹凸や隙間をなくし、カウンターも薄くし、キッチン本体と一体的にすることで、全体がひとつの箱に見えるように工夫しています。さらに、TOTOのオンリーワンアイテムであるクリスタルカウンターが加わり、キッチンに明るさや華やかさをもたらします
クリスタルカウンター、透明感があって目を引き付けられる素材ですね。
嘉嶋 自然光や照明の光などが半透明の素材の中に入り込むので、その時々に応じて多彩な表情を生むのが大きな特長です。キッチン全体を明るく清潔感のある空間に演出することができます。
光のキッチンと表現されるのもよくわかります。
嘉嶋 今回のリニューアルでは、キッチンのノイズレスデザインを継承するとともに、クリスタルカウンターの魅力をさらに引き出して進化させる、ということがポイントのひとつになりました。
クリスタルカウンター、どのような進化を遂げたのでしょうか?
大栗さん(以下、大栗) もともとザ・クラッソのデザインコンセプトであるノイズレスデザインによって、余計な凹凸がなく空間に調和する形状であるため、キッチンを空間の「華」とするCMF部材の提案も生まれました。その象徴となったのが、光を取り込み、キッチンを明るく華やかに演出するクリスタルカウンターです。今回は、柄入りのバリエーションを増やしました。柄入りの場合、カウンターの裏(下)面に柄を印刷し、それを半透明の基材に透かして見せ、奥行き感のある豊かな表情をつくり出します。
※CMFとは:カラー(色)、マテリアル(素材)、フィニッシュ(仕上げ)の略
新たに加わった柄について教えてください。
大栗 ひとつは「カラカッタカロレ」。世界市場で人気の高い大理石がモチーフです。元の石柄にはない光のイメージをちりばめて、クリスタルカウンター独自のふわっと浮かび上がるような柄に仕立てました。クリスタルカウンターは光を取り込む素材なので、色が反射しあってしまい、思い通りの色味にするのが大変でした。繊細で温かみのある色柄を目指して調整しながら、複数の色をうまく組み合わせた結果、素材の発色のよさを生かした魅力的な柄に仕上がりました。
もうひとつの「白凪(しらなぎ)」は優しい色合いですね。
大栗 「白凪」は水面がきらきら、ゆらゆらしているような様子をイメージした模様です。白とグレーの色をベースにしていて、どんな空間にも合わせやすいのが特長です。この柄は当初から「多くの皆様に好まれる柄にする」というねらいがあり、お客様にヒアリングを行い、好まれる柄の傾向を調べるところから始めました。その結果、清潔感があり、空間に馴染みやすい柄モチーフを模索して、白凪ができ上がりました。このような白色を基調とした柄の場合、柄が濃すぎると白さが失われてしまい、反対に白さを強めると柄が薄れてしまう傾向があります。ちょうどいいバランスを探るのに何度もサンプルをつくって確認するなど、検討に時間をかけました。
2色の新柄が追加されて、単色、柄入り各5色ずつ、計10色の展開になりましたね。買う側は迷ってしまいそうです(笑)。
大栗 どれも私たちが自信をもって送り出したデザインです。どれを選んでも素敵なキッチンに仕上がると思いますよ。
「使いやすい」「きれい」についてはいかがですか?
嘉嶋 まず、ほうきのように水でシンクをさっと流せる「水ほうき水栓LF」が、タッチレスで水を出したり止めたりできる「タッチレス水ほうき水栓LF」になりました。作業中で手に洗剤の泡や汚れのついた状態でも、手をかざすだけで操作できて衛生的です。キッチンの水栓は他の部屋の水栓と比べて出し止めする頻度が多いので、誰がどの位置からどのように使っても水を確実に出し止めできるかを検証しました。また吐水位置が遠くて腰に負担がかかるというお客様の声にお応えして、吐水位置を手前に変更。水はねも抑えるような位置にしました。
収納も改良されているそうですね。
嘉嶋 大型の周辺収納である「コンフォートユニット」は、収納力はもちろん作業性まで考え抜いたアイテムです。収納物が多いと雑多に見えてしまうケースがありますので、家電や食器なども含め、リビングからしっかり目隠しできるつくりになっています。新たに内部にカウンターを設けたバリエーションも加わり、キッチンの延長として作業動線にもこだわった収納ユニットです。
機能性や清潔性など細部へのこだわりはTOTOならではのものですね。
嘉嶋 タッチレス「きれい除菌水」生成器、スクエアすべり台シンク、ゼロフィルターフードecoなどのTOTOの技術も、もちろん搭載しています。使いやすく、きれいなキッチンですよ。
開発にあたって苦労されたことは?
大栗 クリスタルカウンターの色や柄の調整は気を使いましたね。コロナ禍の折でもあり、サンプル作成の際の打ち合わせもオンライン。色味についての微妙なやりとりもパソコンの画面を通じておこなっていたので、お互いに正確な発色がわかりにくかった。手探りのまま、やり取りを繰り返しました。
嘉嶋 無数の試作を繰り返し、狙いの色柄を実現していきました。はじめは小さめのサンプルで、色の濃さを複数パターンで作成するなどして、狙いの色柄を決めます。けれど、その色柄で実際のキッチンのサイズにしてみると、また印象が変わるので、大きな試作品も複数回作成しました。デザインメンバーと一緒に何度も確認しながら、今回の柄をつくり上げていきました。今回、企画から開発までトータルに携わることができ、とてもやりがいを感じました。
「企画」と「開発」の仕事の違いは?
嘉嶋 簡単に言うと、企画は出荷実績やマーケティング調査などのデータを見て商品のラインナップや方向性を決める仕事で、開発はその方針のもとで、お客様のニーズや使われ方などを見える化・数値化して、強度・安全性・防汚性などを設計、検証し、商品を実現する仕事です。
大栗 私も従来はデザイナーとして空間や商品の意匠に携わってきたのですが、今回のプロジェクトでは、企画の段階から関わりました。嘉嶋さんとも部材の品揃え数やねらいのお客様への空間イメージ、カウンターとキッチン扉面材の組み合わせなど、よく検討しました。
嘉嶋 大栗さんは頭の中のデザインをすぐにCGに落とし込んでくれるから、イメージを共有しやすいんですよね。「こういうお客様の、こういう空間に合う商品」について、空間全体のイメージをつくってくれるので企画側はありがたい。「あ、こういう住空間にしたいから、こういうデザインが必要なのか」とひと目でわかるので。オンラインでもきちんと情報共有ができました。
大栗 自分自身でもCGにしてみると気が付くことがたくさんあります。ひとりでは仕事は完結しませんから、いかに部門間でうまく意思疎通を計れるかが結果を大きく左右するように思います。
これからどんなキッチンをつくっていきたいですか?
嘉嶋 プライベートでは2児の母なので、仕事と育児と家事に追われる日々。「美しい・使いやすい・きれい」がコンセプトのザ・クラッソは、私と同じように家事の時短を求めるお客様にもぜひおすすめしたいですね。平日は忙しい分、休日には子どもと一緒にお菓子や海苔巻きをつくったり、ラーメン屋さんごっこをしたり、わが家のキッチンは楽しく過ごす場所になっています。機能やデザインは進化させていく一方で、そういう楽しい要素も加えられたらいいなと思います。
大栗 わが家も小学生と幼稚園児がいるので、嘉嶋さんのお話はよくわかります(笑)。子どもが幼いときはリビングダイニングで何をしているかよく見えたらいいなあと思っていましたが、大きくなった今は調理をしながらカウンターに座っている子どもの勉強を見られるといいのになと思っています。子どもの成長によってキッチンの使い方って変わりますよね。家族とのコミュニケーションの場にもなります。家族のステージによって可変性を発揮するようなキッチンがあるといいですね。
生活の中にも商品開発のヒントがありますね。
大栗 いろいろな暮らし方、生活のシーンに柔軟に寄り添えるキッチンがあるといいですね。
嘉嶋 楽しいというキーワードも重要だと思います。お客様が毎日ワクワク楽しく過ごせるキッチンを提案したい。それが今後の目標ですね。
編集後記
オープンスタイルのキッチンが主流になりつつある昨今、カウンタートップは、リビングダイニングの雰囲気を左右する重要なパート。コロナ禍で活動が制限される中でも、慎重にヒアリングや試作、情報共有を重ねたというだけに、幅広いインテリアになじみ空間をおしゃれに見せてくれる柄・色調に仕上がっています。おふたりが仕事・暮らし双方から得たデザインと実用性とのバランス感覚がしっかりと結実しています。
編集者 介川 亜紀
取材・文/渡辺 圭彦 写真/後藤 徹雄 構成/介川 亜紀 2022年10月11日掲載
※『快適はヒトの手から~開発ストーリー~』の記事内容は、掲載時点での情報です。
次回予告
第4回は、「光と素材」で上質な空間を進化させ、黒を基調にしたモダンなデザインと、調光・調色システムによる穏やかなくつろぎ感が魅力のシステムバス「シンラ」の開発者にお話を伺います。
2022年11月29日公開予定。お気に入りに保存しました