


夢洲駅
移動の新たな魅力の発信を目指し、「移世界劇場」をコンセプトとする夢洲駅。アルミ製の「折り紙天井」は、鉄道の運行ダイヤ図を日本の伝統文化である折り紙で表現している。訪れた人が光のゲートをくぐり、時空を超えて別世界へ導かれるような演出も印象的。

01:オールジェンダートイレの洗面コーナー。開放感を重視し、誰もが気軽にオールジェンダートイレを利用できるようにしている。




06:女性トイレのパウダーコーナーには、洗面台の他に荷物置きのある全身鏡を設置。ルーバーの奥にも化粧直しができる鏡が用意されている。
07:バリアフリートイレには、オストメイト設備やおむつ交換などができるシートも設置。車いす利用者はもちろん、乳幼児連れ、高齢者など、あらゆる人が安心して利用できる。
「未来社会の実験場」を掲げる2025年大阪・関西万博。その会場の最寄り駅であるOsaka Metro「夢洲駅」では、トイレづくりにおいてもさまざまな挑戦が行われました。
「Osaka Metroのトイレ整備のコンセプトである『ホスピタリティコミュニケーション』も踏まえ、夢洲駅のトイレでは未来を見すえた〝上質なおもてなし〟を追求しています」と大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)の佐藤裕孝さんは言います。
そして同社の篠原麻衣さんも、「万博では多様性の受容も大事なテーマです。そこで今回、多様な生き方、価値観に応えることも意識しました」と続けます。
そうした考えを具現化した取り組みの一つが、誰もが利用できるオールジェンダートイレの設置です。
「設計段階ではその配置も議論となりましたが、アプローチのしやすさを重視し、男性、女性トイレの手前としています。また壁面にガラスを採用するなど、閉塞感も排除しました」(篠原さん)
「機能分散も特徴で、一般的なトイレブース、オストメイト設備付きブース、乳幼児連れ配慮ブースを2つずつ用意しました。それぞれ異なる機能を持たせることで、別途設けたバリアフリートイレへの集中を緩和でき、車いす利用者の方の利便性も向上します」(佐藤さん)
その他、夢洲駅では男性トイレ、女性トイレの個室ブースも壁を天井まで立ち上げて個室性を高めたり、女性トイレで洗面台以外に化粧直しができるスペースを用意したり、おもてなしの観点からさまざまな取り組みを行っています。
「従来授乳室は駅長室付近に設け、そこで鍵を受け取って利用する形でしたが、夢洲駅では授乳室もあるベビーエリアをトイレエリアのそばに設置しました。また、トイレなどの利用状況が一目で分かるサイネージの設置もOsaka Metroでは初めてです。これまでも公共トイレに求められるものは、和式便器から洋式便器、温水洗浄便座、パウダーコーナーなど、実は比較的短い時間軸で変化してきました。トイレの印象は駅そのもの、さらに企業ブランドの評価に直結しますから、夢洲駅での取り組みの効果、評価もしっかり検証し、今後に生かしていきたい」と佐藤さんは言います。
「トイレは単に用を足す場所ではなく、駅の中で数少ない落ち着ける場所です。お客さまにいかに居心地のいい空間を提供するか。そうした思いを大切にして、これからも駅のトイレを進化させていきたい」と篠原さんも加えます。
施工段階に入っても設計会社、施工会社、Osaka Metroで協議し、設計内容や仕様をブラッシュアップしたという夢洲駅のトイレ。その機能性やデザイン性はすでに利用者から高い支持を得ており、これからの公共トイレの方向性を示す優れた事例の一つといえそうです。

| 名 称 | Osaka Metro 中央線 夢洲(ゆめしま)駅 |
| 所 在 地 | 大阪府大阪市此花区夢洲東1丁目 |
| 施 主 | 株式会社大阪港トランスポートシステム |
| 設 計 | 大阪市高速電気軌道株式会社 株式会社安井建築設計事務所 |
| 施 工 | 大林・熊谷・東急・東洋特定建設工事共同企業体 |
| 構 造 | 鉄筋コンクリート造一部骨組膜構造・鉄骨造 |
| 延床面積 | 4904.17㎡ |
| 竣工(改修) | 2025年1月 |
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