

リモコン自身が発電をする画期的な製品として、2014年の発売開始以来、
さまざまな施設のトイレで広く活用されている「エコリモコン」※。
この度、約10年ぶりのリニューアルを果たした新型エコリモコンについて、開発担当者に話を聞いた。
※ エコリモコンは、TOTOの大規模施設向け「アプリコットP AP2系」のリモコンです。
エコリモコンの厚みを約1/2まで薄型化させた
── リニューアルで最も変わった点はどこですか。
橋本●最大の変更点は、薄さです。従来製品は厚さが25mmありましたが、新型エコリモコンでは半分以下の11.5㎜を実現しています。もちろん、薄くなってもボタン配置や押し心地の良さは変えないようにこだわっています。
── どうして既存製品の半分以下まで薄型化を目指したのでしょうか。
橋本●エコリモコンを一層進化させていくうえで薄型化に行き着きました。近年はトイレ空間にスタイリッシュなデザインが求められるようになり、「空間との調和」という観点からもより薄型のエコリモコンはフィットします。また、エコリモコンと併用するケースがある既存のオートクリーンC(大便器自動洗浄システム)用の便器洗浄リモコンとも厚みをそろえることで、デザインの統一感を出す狙いもあります。
── 薄型化を実現するうえで、どのような課題がありましたか。
橋本●エコリモコンの心臓部である発電モジュールの薄型化が大きな壁となっていました。ウォシュレットを作動させるために十分な発電量を維持しながら、同時に発電モジュールを薄くするには、より効率的な発電機構の開発が不可欠でした。開発に着手してしばらくはなかなかうまくいかず、開発は難航。発電量を維持しながら薄型化を実現するために、試行錯誤を繰り返しました。一時はほかの発電方法も検討しましたが、最終的には従来と同じ電磁誘導による発電方法が最適と結論付けました。そこから、既存の発電機構の無駄を見直し、新たな発電モジュールの薄型化にこぎつけました。
従来のエコリモコンは厚さが25mmあったが、新型エコリモコンでは半分以下の11.5mmを実現し、より洗練したデザインへ進化。
流すボタンの集約や、「止」「おしり」などメインのボタンを目立たせることで、ボタン操作がわかりやすくなった。またどんな押し方でもボタンを押し込みやすいよう、各操作部のボタンは従来のピアノキー形状を継承している。── どのようにして新たな発電モジュールを開発したのですか。
橋本●エコリモコンはボタンを押す力を利用して内部のモーターを回し、その都度発電する技術を採用しています。これまではボタンを押し込んで発電ばねを縮め、ばねを解放したときのエネルギーでモーターを回し、発電していました。しかしこの方法では、ボタンを押し込む際にモーターが逆回転するエネルギーの無駄が生じていました。そこでボタンを押す際はモーターの動きをロックして、ばねの解放時にのみモーターを回転させる新たな構造を開発しました。これは水鉄砲からヒントを得ました。空気圧で水を飛ばす水鉄砲は、先端をふさいで引き金を引いている間に空気圧を高めます。この「力を溜めて一気に開放する」という仕組みを発電モジュールにも応用することで、発電効率を大幅に向上させることに成功しました。また、ボタンを押す動きが発電モジュールに無駄なく伝わるように、エコリモコン内部のリンク機構も一新しています。
洗浄ボタンの変更などでより多様な人に使いやすく
── このほかに、薄型化に貢献した技術はありますか。
橋本●電波通信技術の進化も貢献しています。リモコンからウォシュレット本体への信号送信には、電力消費量の多い赤外線通信ではなく、より省エネな電波通信技術を採用しています。この技術の進化で、最新モデルでは消費電力がいっそう低減。薄型化した発電モジュールでも確実にウォシュレットと通信できるようになりました。
── パブリックトイレでは多様な人の利用が想定されます。あらゆる人に使いやすいリモコンとするためにこだわった点はありますか。
橋本●社内のユニバーサルデザイン部門と連携し、障がいのある方々にも試作品を使用してもらい、意見を反映することで誰もが使いやすいリモコンを目指しました。例えば、新型エコリモコンでは流す「大」「小」の洗浄ボタンを一つに集約しています。これは洗浄ボタンが二つあるとどちらを押すべきかわかりにくいという声が一部の障がいのある方から寄せられていたことから、改善を図ったものです。ボタンが一つでも、ウォシュレット本体側が着座時間から適切な洗浄水量を自動で判断していますので、これまでどおり節水に貢献します。
新しい発電モジュールは、ボタンを押す力を最大限生かせるように発電機構を一新している。── 新型エコリモコンの開発にこめた思いをお聞かせください。
橋本●エコリモコンの発売後、多くのお客様にご好評をいただくなかで、次の形を模索した結果、進化の形の一つとして、薄型化に行き着きました。今回、新たな発電モジュールの開発に成功したことで、エコリモコンの特長はそのままにデザイン性を高め、より多様な人に使いやすい製品へと進化させることができたと自負しています。リニューアル後も多くの皆様の声をお寄せいただきながら、より良い製品へつなげていきたいと思っています。
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