


三菱電機株式会社 名古屋製作所
1924年に三菱電機の汎用電動機の量産工場として設立。以来、生産ラインの自動化・省力化を担うFA事業の中核製作所として、常に時代の最先端を走り、創造性あふれる製品でFA市場をリードし続けている。
「創業から100年が経ち、これまでもトイレの改修は進めていましたが、近年特に老朽化が目立つようになりました。併せて従来のトイレが抱えていた問題を解決するため、工場全体で順次改修を進めています」
三菱電機株式会社名古屋製作所(以下、三菱電機名古屋製作所)生産システム推進部環境推進課の清水岳人さんはこう話します。
三菱電機名古屋製作所はナゴヤドーム5つ分以上の敷地に約20棟の工場があり、就業人数は関係会社の人なども含めるとおよそ7000人と小さな自治体ほどの規模。トイレは各工場の屋外にあり、隣接する場所や中間地点などに配置されています。
「人通りの多い通りに面しているところもあれば、少し奥まったところにあるトイレもあります。また、それぞれで利用者の男女比も異なるので、一つひとつのトイレごとに改修プランを立てて進めなければなりません。課題を浮き彫りにするため従業員にアンケートを行いました」
全体的な課題として浮かび上がったのは屋外トイレやブースの出入り口に段差があって利用しにくいことや、パーテーションが設置されていないところは外から見えてしまったり、窓越しに目線が合ってしまうこともあり、利用者が気まずい思いをしていたことなどです。また、手動式水栓などが残っていたり器具の古さが目立ち、臭いが気になるという声も聞かれました。
トイレの清掃は1日1回以上行われているためとても清潔に保たれていますが、老朽化などのため臭いに対する改善が要望されたようです。
2024年11月に改修が完了したW4と呼ばれる工場の北側に隣接する屋外トイレでは、全体的な課題に加え、女性トイレの混雑を緩和してほしいという要望が大きかったそうです。
W4工場の従業員の男女比は4:1。他の工場では8:1などになっているところもあり、比較的女性が多いのが特徴です。そしてこのトイレは最寄り駅からの通勤路になる道沿いにあるため、こちらの工場の従業員以外の利用も多く、女性トイレは和式を含めて3室しかなかったので混雑することが多かったようです。
そこで、女性トイレの数を増やすことを検討しました。
「トイレ全体のスペースを拡大することはできないので、男性トイレと女性トイレの間の壁を移動して、女性トイレを3室から6室に増やしました。ブースを木目調にしてほしい、タイルを大理石調にしてほしいという声がありましたので、改修に反映しました。さらに女性からの要望の声が多い、スタイリングコーナーや姿見も設置しています」
女性トイレのスタイリングコーナーや姿見などは、ほかの屋外トイレの改修でも導入されています。
改修後にもアンケートを行ったところ、「良い」という意見が多く、きれいになってよかった、暖かい感じがして過ごしやすいなど、喜びの声が挙がっているといいます。

全体的に老朽化が進んでいた改修前のトイレ。採光を考慮して設けられた窓だが、通行人と目線が合いやすかった。また出入り口の衝立もやや低めだった。洋式便器も取り入れられていたが、全体的に暗めな印象であった。



W4工場のトイレの改修では、IoTが導入されました。
「働く皆さんの健康や快適な職場環境を確保するため、自社で設けた設置基準をもとに改修を進めているのですが、かなり以前に設定した基準のため設置基準が現状の職場の状況と合っているのだろうかという疑問がありました」
W4工場のトイレは女性トイレを3室から6室に増やし、男性の小便器を10から7に減らしましたが、女性トイレで使用回数の少ないブースはないか、男性トイレが混み合ったりしないかなどを知りたくても、トイレのそばに張り付いて確認するわけにはいきません。
そこで、「TOTO CONNECT PUBLIC(設備管理サポートシステム)」を導入しました。IoT対応の自動水栓一体型電気温水器やウォシュレットPS、自動洗浄小便器は利用するたびにカウントされるので、利用頻度がわかります。
「導入から3か月ほどの時点では、女性トイレも男性の小便器もほぼまんべんなく利用されていることがわかりました。また、男性トイレでは混雑は発生しておらず、女性トイレの混雑も緩和されているようでした。利用頻度が〝見える化〟されたことで管理しやすくなったと思います。引き続きデータを確認して、次の改修に生かしたいと思います」
また、「TOTO CONNECT PUBLIC」では、リアルタイムで不具合に気づくことができたり、ウォシュレットの温度変更などの器具の設定も遠隔で一括して操作することができるため、トイレの維持管理が効率的になります。
「今回は工場の屋外トイレにIoTを導入してデータを取得することができました。次に導入する場合は、事務系の業務を行うところが良いのではないかと考えています」
清水さんは、今後も順次改修を進め、「誰もが使いやすく、従業員にとってより快適なトイレを実現していきます」と話しました。多くの方が働く工場は、さまざまな意見や要望が挙がります。これをしっかり聞いて、きちんとまとめ、より働きやすい職場にしていくという配慮が伺えました。
01:改修後の女性トイレ。オフホワイト系の壁と照明の効果で明るい印象に。個室間の壁は天井まで間仕切り、プライバシーを尊重したブースに。洗面器には、自動水栓一体型電気温水器や水石けん入れを完備。コンパクトながら身だしなみを整えやすいよう小物などをおける棚も設置。また天井裏に「パブリックレストルーム設備管理サポートシステム」専用のゲートウェイが設置されている。


02/03:02は男性トイレの出入り口、03は女性トイレの出入り口の衝立。改修前と比べるとやや高く、幅も広くなり、他人の視線が気にならなくなったと好評。


04/05:小便器はIoT対応で清掃性のよい壁掛型の自動洗浄小便器を設置。足元には抗菌・抗ウィルス効果で汚れやニオイの発生を抑えるハイドロセラ・フロアPUを採用している。1か所に手すりを設け、多様な利用者に配慮。通路が狭いという意見があったため、個室との距離にも余裕をもたせた。




| 名 称 | W4北屋外トイレ |
| 所 在 地 | 愛知県名古屋市東区矢田南5-1-14 |
| 施 主 | 三菱電機株式会社生産システム推進部環境推進課 |
| 設 計 | 名菱テクニカ株式会社 |
| 施 工 | 株式会社 今北 |
| 構 造 | S構造 |
| 延 床 面 積 | 40.2㎡ |
| 竣工(改修) | 2024年11月 |
| パブリックコンパクト便器・フラッシュタンク式 CFS498B | 設備管理サポートシステム ゲートウェイ TYSG1000V1 |
| 棚付二連紙巻器 YH702 | 自動洗浄小便器 US900JS特 |
| ハイドロセラ・フロアPU AB690BR | 小便器用手すり T112CU22 |
| 壁掛洗面器 LS721CM、LS722CM | 自動水栓一体形電気温水器 REAH03B1R T600 |
| 水石けん入れ TLK05202J | パブリック用流し SK22A |
| ウォシュレットPS(擬音装置「音姫」付きエコリモコン) TCF5534A特 | |
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