三宮再開発や神戸空港国際化など、ますます盛り上がりが期待される兵庫県神戸市。
コロナ禍を経て、観光客数は右肩上がりに回復しています。
神戸の観光を盛り上げていくためにどのような方策をとっているのでしょうか。
神戸観光局(神戸DMO)観光部課長の新井学人さんに伺いました。
日帰りを一泊に 一泊を連泊に拡大する
── コロナ禍以前(2019年)と比べて全国的に観光客が回復傾向にあります(※1)。
神戸の状況はいかがでしょうか。
宿泊者数はコロナ禍前の水準に戻ってきています。国内観光が特に顕著ですが、一方でインバウンド(訪日外国人観光客数)は2019年比で8~9割程度にとどまっている状況です。2025年に大阪・関西万博が控え、さらに神戸空港では2025年に国際チャーター便の就航、2030年前後に国際定期便の就航が予定されており、インバウンドはこれまで以上の活性化が見込まれます。こうしたなかで神戸観光の中心である三宮エリアやウォーターフロントエリアの再開発など、観光客の受け入れ体制整備が進んでいます。
── 既存の宿泊施設・観光施設に対してはどのように支援していますか。
神戸には有馬温泉のように伝統ある温泉街や建造物が多く保存されており、それらが神戸という街の魅力にもなっています。ただし築年数の経過した施設では水まわりが古くなっていたり、狭い間取りだったりと、課題があるのも事実。より魅力的な施設になるよう、近年は観光庁の高付加価値化補助金事業(※2)を活用した施設改修をお手伝いしてきました。令和3、4年は神戸全域で、令和5、6年はそこから有馬温泉エリアで申請しています。
── 具体的にはどのような改修を実施してきましたか。
温泉旅館でいえば、2室を1室にして露天風呂付きの広々とした客室に改修した例があります。部屋数は減りますが、宿泊客により良い〝価値〟を提供することで客室単価の向上につながります。部屋数を減らすことで、同じ人数でより丁寧なおもてなしをしやすくもなります。利益をしっかりと出しながら、働く人にとっても無理なく、より良いサービスを提供できる環境整備が、多くの観光客を呼び込み、さらに街を盛り上げる好循環になることを期待しています。水まわりに関していえば、洋式トイレであっても温水洗浄便座がなかったり、ニーズに合った設備にはなっていないところがありました。高付加価値化補助金事業は、水まわりを見直す好機にもなったかと感じます。
── 有馬温泉エリアでの一連の改修整備は、神戸への観光にどんな影響をもたらすと考えますか。
有馬温泉での改修事例は50件超となりますが、いずれの施設でも有馬温泉の風情を壊さず、持ち味をいかに進化させるかを大事にしていました。海外から訪れる観光客は日本に古くから伝わる価値に強い魅力を感じていますから、伝統を大切にする姿勢は強い武器になります。国内外の観光客を神戸へと誘致していくうえで、有馬温泉は大きなパワーを持っており、水まわりを含めた施設改修によってさらに快適さを増したと感じています。神戸旅行に際して日帰りが一泊へ、一泊が連泊になるように、私たちもその魅力を発信していきます。
※1 観光庁「宿泊旅行統計調査 2023年・年間値(確定値)」
※2 観光庁「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」
お気に入りに保存しました