阪神高速道路株式会社
1964年に土佐堀~湊町区間が開通して以降、交通渋滞の解消、物流の効率化といったさまざまな課題の解決を目指しながら整備が進められた阪神高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を効率的に行うことにより、道路交通の円滑化を図り、経済の健全な発展と生活の向上に寄与することを目的として2005年に設立。「先進の道路サービスへ」の企業理念の下、安全・安心・快適なネットワークを通じたお客さま満足の実現と、関西のくらしや経済発展への貢献を目指している。
阪神高速道路は、大阪市と神戸市およびその周辺地域に258.1㎞のネットワークを有する関西都市圏の大動脈で、阪神高速道路株式会社およびグループ各社は、この道路網の建設や維持管理を担っています。道路そのものだけでなく、パーキングエリア(以下、PA)などの整備も重要な取り組みのひとつ。
「私たちは、『先進の道路サービスへ』という企業理念のもと、お客さまの便利で快適なドライブライフの実現を目指しています。中でもPAは、お客さまにリラックスしていただける空間になるよう、お客さま目線での改善・充実に取り組んでいます」と工事を担当した阪神高速道路管理本部大阪保全部施設工事課の大畠和輝さんは話します。
お客さまにとって、より利用しやすい高速道路となるよう、同社では2012年から距離料金制に移行しました。移行に伴い不要となった本線料金所を機能移設し、PAとして整備を進めています。尼崎PA、南芦屋浜PA、高石PAに続き、2022年4月に泉大津大型専用PAを開業。どのPAも都市高速ならではの限られたスペースを工夫して、設置しています。お客さまに「ほっ」としていただく処(ところ)=「ほっと処(しょ)」をコンセプトとして、「きれい・あんしん」「やすらぎ」「ぬくもり」の3つの視点により、お客さまにご満足いただける空間を目指しています。
「泉大津大型専用PAは、当社で初めて木造を採用しました。また、内装にも大阪府産材の間伐材や未利用材を使用した木レンガを採用しました」と設計に携わった同社管理本部管理企画部施設保全課中村美貴さんは話します。
高架上の建物で木造は非常に珍しいですが、検討を重ね、実現しました。
同社は国が定めているよりも厳しい独自の建築基準を設けており、木造である泉大津大型専用PAも、もちろんその基準をクリアしています。
木造にした背景としては国の施策で木材利用が促進されていること、SDGsの達成に向けた環境配慮への意識の高まりがありました。また、阪神高速道路PAのコンセプトである「ほっと処」を体現する狙いもありました。
建物の形状は楕円形で、壁に沿ってベンチを設置しています。中央には観葉植物を配置し、周囲を回遊できる造りにしました。ゆっくり休憩したい、少し体を動かしたいなど、PAを利用されるお客さまのご要望にお応えできるよう配慮しています。
泉大津大型専用PAは、ひとつ手前の泉大津PAにおいて大型車駐車場が慢性的に満車となり利用しにくい事象が生じていたため、その解消を目的に大型車専用としての運用を計画しました。
長距離トラックや観光バスの利用を想定し、トイレについても幅広いお客さまが使いやすい空間になるよう工夫しました。男女ともトイレ全体にゆとりをもたせる設計で、2ヵ所設けたバリアフリートイレはそれぞれ左右勝手と仕様が異なります。
「バリアフリートイレの引き戸は、ブース内の設備と左右勝手を統一しているため、利用されるお客さまの身体状況に合わせて使いやすいほうを選んでいただけます」と中村さん。
さらに男女トイレは全ブースにベビーチェアを設置しています。また、機能分散を目的とした大きめブースにはベビーシートと着替え台を設置して、バリアフリートイレの利用者集中を回避しています。
2021年3月に国交省が「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」を改正し、バリアフリートイレの機能分散化を提言していますが、同社はお客さまに安全・安心・快適にご利用いただくことを第一に考え、以前から意欲的に取り組んできました。
2010年までにすべてのPAに温水洗浄便座を設置し、ベビーチェア、オストメイト設置などのバリアフリー化も完了しています。現在は全PAトイレの空調設備設置が完了し、さらなるサービスの向上を目指して完全洋式化や改正された建築設計標準対応に向けた再リニューアルを順次行っています。
「きれい・あんしん」なPAを提供するため、泉大津大型専用PAには清掃担当者が常駐し、屋内と建物外や植栽部の清掃を行っています。
トイレは衛生面と清掃性を考慮して乾式清掃化しました。大便器・小便器とも壁掛型とし、床清掃をしやすくしています。
また、無人になる時間帯があるため、消耗品がきれないよう補充確認を徹底。報告時には携帯電話で画像を送信し、関係部署が即時に確認できる体制を整えています。
また、当PAは防災施設としての機能を有しているため、周囲の高速道路に発生した段差などを解消するための緊急資材を保管し、防災備蓄品もストックしています。さらに、避難車両の滞留が可能なスペースも確保し、災害時には自家発電設備によって一定時間電力が供給され、トイレが使用できるように設計しています。
大畠さんは言います。
「高速道路は公共性が高く、安全かつ安心してご利用いただけることが大前提です。 また、PAの整備や必要な情報の発信など、すべてのお客さまに快適にご利用いただけることがなによりも大切です。これからも阪神高速道路をご利用されるお客さまにより良いサービスをご提供し、さらにご満足いただけるように、さまざまな取り組みを積み重ねていきます」
名 称 | 泉大津大型専用パーキングエリア |
所在地 | 泉大津市汐見町地先、他 |
施 主 | 阪神高速道路株式会社 |
設 計 | 堀田設計・Uo.A設計共同体 |
施 工 | コーナン建設株式会社 |
構造・規模 | 木造平屋建 延床面積324.36㎡ |
竣工年月 | 2022年4月 |
壁掛大便器セット・フラッシュタンク式 UAXC3C | ウォシュレットPS2 TCF5524AUP |
ベビーチェア YKA16S | ベビーシート YKA25S |
フィッティングボード YKA41R | コンパクト・バリアフリートイレパック UADAKA1L/R1A1ASD2WA |
(男性トイレ) 壁掛自動洗浄小便器 UFS900R 壁掛洗面器 XPL2111 | (女性トイレ) アンダーカウンター式洗面器 L505 自動水栓 TLE25506J |
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