泉北高速鉄道株式会社
泉北高速鉄道は、泉北ニュータウン·トリヴェール和泉と大阪都心をつなぐ輸送の“動脈”として、半世紀にわたってニュータウンのファミリー層や大学生など、沿線で暮らす人々の生活を支えてきた。2021年には泉北高速鉄道線開業50周年を迎え、「選ばれる鉄道」であり続けるために駅構内の整備に着手。現在、和泉中央駅ほか3駅でトイレの大幅リニューアルが完了した。
2021年に泉北高速鉄道線が開業50周年を迎えた泉北高速鉄道では、「選ばれる鉄道」づくりの一環として大規模なトイレリニューアルを進めています。従前からトイレの洋式化、自動水栓、男性トイレ個室ブース内のベビーチェア設置など配慮を重ねていましたが、「今まで以上にお客さまに気持ちよく過ごしてもらえるよう、さらに進んだリニューアルを施しました」。改修に携わった同社運輸部の鎌倉公輔さんはこう話します。
「今までは『駅のトイレは利用したくない』と避けていた人にも、『この駅のトイレなら利用したい』と思ってもらえるよう、商業施設などを参考に、スタイリッシュなデザインと使い勝手を追求しました」。こう話すのは、同社技術部の野谷耕治さんです。
リニューアルにあたって、メインとなる利用者層に合わせて駅ごとにレイアウトや機器などを検討。和泉中央駅では、家族連れの方がより使いやすいトイレを意識したそうです。
「ファミリー層の利用が多い和泉中央駅ではベビーカーで入れるバリアフリートイレが混雑しやすくなっていました。そこでトイレ面積を最大限拡張して、トイレ機能の分散を図りました」。具体的には、ベビーカーを押したまま入室できる広めブースを男女トイレにそれぞれ新設。「広めブースはおむつ交換台やフィッティングボードを完備し、お子さまを連れた方でもご利用しやすくしています」と鎌倉さん。
駅舎内は駅員の休憩室やラッシュ時を想定した通路幅の確保などが必要で、トイレに割ける空間には限りがあります。乗降客の邪魔にならないようトイレ前通路の動線には特に配慮しながらもスペースを捻出したことで、男女ともに広めブースを作ることができたそうです。この工夫でバリアフリートイレの混雑は解消しつつあります。
女性トイレにはアイランド型の手洗いカウンターとスタイリングコーナーを導入。スタイリングコーナー側の通路幅を広めに設計し、入口からトイレへ向かう動線と、トイレ使用後に手洗い、スタイリングコーナーへ向かう動線を分離したことで、利用者の流れもスムーズになっています。女性トイレの手洗いカウンター周辺はトイレ後の手洗いやメイク直しなどで混雑しやすいですが、身だしなみを整えるスペースと手洗いスペースを明確に分けることで、落ち着いて手洗いやメイク直しができる空間を実現しました。
また、女性社員の意見を取り入れたスタイリングコーナーのいす付きブースは、座ってゆっくりとメイク直しできると利用者から好評です。
5:(右)非接触で手洗いできる自動水栓、自動水石けん供給栓を設置。デザインにこだわるとともに、使いやすさや衛生面にも配慮している。
6:(左)個室ブースの鍵の上にスマホなどの一時置き台を設置。目に留まりやすく忘れ物予防に役立つ。
リニューアル前から自動化·非接触を推進していたため、今回の改修では利用者から見えない清潔性のさらなる向上を意識し、さまざまな工夫を施しました。一つがトイレ特有のにおい対策です。男性トイレの小便器下には抗菌効果のある床材のハイドロセラを用いているほか、小便器ライニング内に小型の換気口を設置。さらにエアコンの気流で適切に空気が流れるように計算しているため、常に換気され、臭気がこもらないようになっています。
また設計段階で清掃担当部門からも意見を集め、清掃方法を湿式から乾式に切り替えたほか、補給回数が少ない大容量の水石けんタンクを採用するなどして、管理·清掃効率を向上。清潔な状態を保ちやすくしたそうです。
3カ月に及ぶ改修期間は、改札外にユニット型の仮設トイレを設置して対応しました。「以前、別の駅でトイレ改修をした際はホームに簡易トイレを設置したのですが、使い心地が悪く、ほとんど利用がありませんでした。仮設トイレであっても、お客さまが気持ちよく使うための配慮が必要です」と野谷さんは説明します。
泉北高速鉄道ではトイレリニューアルのほか、利用者層に合わせた駅ビル内のテナント誘致などにより、さまざまな世代の人が使いやすい駅づくりを進めています。公共交通機関の最大の使命は、安全で正確な運行によって利用者を目的地へと運ぶことですが、同時に「お客さまの自由な外出を手助けする役割も担っています」とお二人は話します。「安心·快適なトイレがある駅を増やし、誰もが気兼ねなく自由に外出するお手伝いをしていきたいですね」。細やかな配慮の積み重ねにより、泉北高速鉄道は今後もまちづくり、住みやすい地域づくりの一翼を担い、社会に貢献していきます。
名 称 | 和泉中央駅 |
所在地 | 大阪府和泉市いぶき野5丁目1番1号 |
施 主 | 泉北高速鉄道株式会社 |
設 計(改修) | 株式会社竹中工務店 |
施 工(改修) | 株式会社竹中工務店 |
構造・規模 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 延床面積8,458㎡ |
竣工年月 | 1994年4月 |
改修工期 | 2021年10月 |
壁掛大便器セット・フラッシュタンク式 UAXC3C | ウォシュレットPS2 TCF5534AEY |
ベビーチェア YKA15S/YKA16S | ベビーシート YKA25S |
フィッティングボード YKA41R | 壁掛自動洗浄小便器 UFS900JCS |
自動洗面器オートボウル TYL101T | 小型電気温水器 REW06A1BH |
コンパクト・バリアフリートイレパック UADAK21RA1ASD2BA | 収納式多目的シート EWC520ARS |
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