岩塚製菓株式会社
1947年創業、米菓の製造販売を行う。全国に10支店があり、長岡市内と北海道に合計9つの工場を持っている。
岩塚製菓は、日本のお米を100%使用し、お米の風味を大切にした米菓づくりに励んでいます。2019年に発表した中期経営計画では、さらなる発展を目指してBEIKA Lab(ベイカラボ)という新工場の建設を決定しました。同時に、既存工場における老朽化問題の解決、生産性向上を図るために、今回取材した長岡工場の増築を進めることになりました。そこで発足したのが各部署から集められた15人のプロジェクトチームです。その中の長岡工場分科会のリーダーで、現・長岡工場の工場長である樋浦秀雄さんは、「より安全安心な商品づくりと、従業員の働きやすさを考えることから工場づくりが始まりました」と、当時を振り返ります。
岩塚製菓の各工場では、衛生管理ガイドラインのHACCP(ハサップ)を基礎とし、品質マネジメントシステム規格のISO9001も取り入れた、食品の安全を確保するための国際規格であるISO22000の取得を進めています。また、トイレ空間を含む工場内の衛生管理においても対策を取ってきました。
一般的な食品関連の工場では、清浄エリア、準清浄エリア、汚染エリアなど3つに区分することが多いのですが、岩塚製菓では、包装などを行う清浄区から、外部と接する場所、トイレといった汚染区、屋外までを5段階のゾーンに区分する独自のプランを策定し、衛生管理基準をより高めたのです。トイレと準清浄区である廊下の緩衝区域として準汚染区の「前室」を設けているのもオリジナルです。
併せて、各ゾーンをまたぐときのルールも厳密に設定しています。例えば、汚染区から清浄区や準清浄区へ直接の立ち入りはできません。また、汚染区から準汚染区に入るには、作業服の着替え、手洗い、粘着ローラーの使用、靴の履き替えが必要です。
画期的なのは、壁と床の色をゾーンごとに区別していること。従業員が自分のいる場所や移動先の分類を視覚で認識できるようにしています。「とくに壁面は常に目に入るので、ゾーンをまたぐときの行動に確実性が生まれました」と総務課長の山本博丈さんは話します。
樋浦さんも「食品工場にとって衛生管理は必須。従業員が区分を意識しやすい設計になっており、働きやすさの面でも効果を発揮しています」と語ります。
トイレは汚染区に当たるため、このゾーン分けに基づいて男女とも壁・床の色をピンクにしました。初めて男性トイレを利用する人はみな驚かれますが、理由を説明すると納得されるそうです。
トイレ入退室時の衛生管理も万全です。緩衝区である前室には靴を脱いで入ります。前室では靴下のまま歩き、すべて個室としたトイレ内では専用のサンダルを履きます。
注目は、それぞれの個室に洗面台を設けていることです。さらに、トイレ使用後に手を洗って、10秒間ハンドドライヤーで乾燥させなければ自動ドアが解錠されないシステムも取り入れています。男性トイレにある小便器の個室も同様です。
個室を出たら前室で粘着ローラーをかけ、靴を履き直して、トイレの外に設置してある洗面台で再度手洗いをし、アルコールでの消毒も行ってから持ち場に戻ります。この一連の動作に沿って適切に動線を設計して機器を配置しているため、誰もが手順を飛ばすことなく、迷わずに衛生基準を遵守できるようになっています。
このように独自のゾーニングと動線を考慮したルール設定により、工場全体で衛生管理を徹底しています。岩塚製菓では、長岡工場増築工事で取り入れた独自の工夫を今後の建て替えや改修でも踏襲し、働きやすい環境と安全安心な商品づくりを実現していくということです。
なお、各工場のトイレは和式便器が多かったのですが、食品工場として衛生面を重視し、順次洋式便器に更新しました。現在はすべて洋式便器になっています。
名 称 | 岩塚製菓株式会社長岡工場 |
所在地 | 新潟県長岡市南陽1丁目1027番地4 |
施 主 | 岩塚製菓株式会社 |
設 計 | 株式会社細貝建築事務所 |
施 工 | 建築:大石組・植木組特定建設工事共同企業体 設備:菱機工業株式会社 |
構造・規模 | S造(地上1階、一部2階)延床面積5,234㎡ |
竣工(増築)年月 | 2021年1月 |
パブリックコンパクト便器・フラッシュタンク式 CFS497B | ウォシュレットP TCF586AR |
壁掛自動洗浄小便器(発電タイプ)UFS900WR | 自動洗面器オートボウル TYL100T |
ベッセル式洗面器 LS722CM | 自動水栓一体形電気温水器 REAL03B11SF41A1 |
自動水石けん供給栓 TLK02S04J |
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