ギャラリートーク開催報告
藤村龍至氏の「ちのかたち」展の3つの構成要素(タイムライン、マルシェ、離散空間)をさらに深掘りして多角的に検証する3回連続のトークイベントを開催しました。
第1回: 菅沼朋香・トヨ元家・山本蓮理 × 藤村龍至
「ギャラマルシェ」
「鳩山町コミュニティ・マルシェ」の管理・運営を通して超高齢化が進む郊外ニュータウンの再生に取り組む藤村氏と、共に携わるアーティスト3人が出演し、TOTOギャラリー・間の中庭で一夜限りのマルシェを開催しました。高度経済成長期のニュータウンの誕生を知らない若者世代が、新鮮な感覚で隠れた問題を見つけ、「マルシェ」という方法で住民と課題を共有し解決に導いていく実践を、現実さながらのマルシェでリアルに再現。さらに、藤村氏から「マルシェ」と「住み開き」の併せ技によって公共と個人の生活を結びつけ、活気あふれるニュータウンを実現していこうという展望も語られました。(主催者記)
第2回:堀川淳一郎・木内俊克・砂山太一 ×藤村龍至
「計算的連続体へーDeep Learning Chairと離散空間Gをめぐって」
藤村氏による「ちのかたち」の三段活用、「個人」(本展3Fタイムラインに相当)→「集団」(同中庭マルシェ)→「計算」(同4F Deep Learning Chair(以下DLC)と離散空間)をめぐり、デジタルスペースをさまざまなアプローチで研究・実践する4人が登場。DLCのプログラミングを行った堀川淳一郎氏によるDLC生成過程の解説を起点に、「学習(Learning)と最適化(Optimization)の違いは?」「まだ人間に頼っているテクトニクス(構築方法)を、AIにいかに学習させるか?」「クオリティ担保のための規範はいかに学習されるか?」など、さまざまな議論が交わされました。「モノとしてのフェーズをソーシャルにどう繋げていくか」という根本的な質問に対し、東京藝術大学藤村研究室では、具体的な建築の実践と、実社会でのリサーチの往復によって実現しようとしていることを紹介。来るべき時代に向け、AIとの共存で建築がどう展開していくのか、さまざまな可能性が示されました。(主催者記)
第3回:藤原徹平・松川昌平×藤村龍至
「教育と学び」
最終回「教育と学び」は、それぞれ大学で教鞭を執りつつ建築家として異なるスタンスを取る3氏が登場。「建築が変わりつつある現在に求められる教育とは?」との問いに、「実環境におけるデザインアーキテクト(藤原氏)」、「情報環境におけるITアーキテクト(松川氏)」、「社会環境におけるソーシャルアーキテクト(藤村氏)」(松川氏による分析)が、各理論を展開。「IT技術のアシストによって多くの人に試行錯誤して学ぶ機会を増やし、だれもが建築をつくれるしくみが実現可能だ」という松川氏のメタ理論に対し、個人の自立的な学びから自分独自の枠組みを見出していく経験主義を藤原氏が提起。藤村氏は両者間の能動的な往復により知の体系をつくっていこうとするなど、数々の創造的なビジョンが述べられました。聴講者から積極的な批評や質問も挙がり、「教える、教えられる」立場を超えて、他者と自分が相互に学びあう環境を創造していくことの大切さが確認されました。(主催者記)