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藤村龍至展 ちのかたち――建築的思考のプロトタイプとその応用

展覧会コンセプト
「ちのかたち 建築的思考のプロトタイプとその応用」

建築を人より遅く学び始めた私は、設計を少し自覚的に学ぶ必要がありました。やがて設計とは、今知っていることを素早く「かたち」にすること(プロトタイピング)と、かたちにしたものを「ことば」にして新しい知識にすること(フィードバック)を繰り返すことだと学びました。かつてクリストファー・アレグザンダーは設計を「かたちとコンテクストのミスフィットを取り除くこと」だと定義しましたが、コンテクストが流動的で、読めない現代の状況でより確かな解に近づくひとつの方法は「3人寄れば文殊の知恵」=より多くの知恵を集めることです。
平凡に映る意見の集合も、十分に大きな集合であればひとりの天才を超える可能性が開かれます。他方で建築が今、デモクラシーとポピュリズムのあいだで揺れているように、世論や市場の暴力に抗い、より普遍的で創造的な解を導くことは、建築にとって困難な問いであり続けています。しかし私たち建築家はいま、AI(人工知能)の技術が進化し、より多くのデータを直接扱うようになった社会で、多様性を認め、寛容な社会の実現を信じて、より多くの知恵が集まれば集まるほどよりよいものができる、と言い切ることに挑戦するべきではないでしょうか。
本展覧会では、建築を知識と形態の創造的な関係=「ちのかたち」として捉え、ときに機械による計算を伴い、設計作業をより多くの人でよりよい解をめざす集合的な知をつくる方法論へと発展させることで、建築を社会のさまざまな課題解決に向けた創造的な知のツールとして再定義したいと思います。
藤村龍至
建築家プロフィール
藤村 龍至(ふじむら りゅうじ) / 建築家、東京藝術大学准教授
1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010 年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。

主な建築作品に「すばる保育園」(2018)、「つるがしま中央交流センター」(2018)、「OM TERRACE」(2017)、主な著書に『批判的工学主義の建築』(2014、NTT出版)、『プロトタイピング—模型とつぶやき』(2014、LIXIL出版)。近年は建築設計やその教育、批評に加え、超高齢化する郊外ニュータウンや老朽化した中心市街地の再生、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。

©Kenshu Shintsubo
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