戸建向けシステムバスルーム『サザナ』
プレミアムHGシリーズ、HSシリーズ新登場
日本初※1 のユニットバスルームを開発したTOTOが、先端技術でつねに時代にさきがけてきたシステムバスルーム。好評のサンジュウマルアイテムに加え画期的なクリーン機能を新搭載して、ひときわ快適なスペースに生まれ変わりました。技術者とデザイナーがタッグを組み、「オンリーワン」のアイデアと技術によって清潔をきわめ、掃除もしやすくした、かつてないクオリティ・バスルームの誕生です。ゲストをお招きしたくなるほどの上質な空間。『サザナ』担当の技術者とデザイナーがご紹介いたします。
浴室事業部 浴室開発部
浴室商品開発グループ
三上貴之
デザイン本部 プロダクトデザイン部
第一デザイングループ
佐藤克仁
取材・文/村上浩平
写真/山下恒徳
好評のサンジュウマルはそのままに
TOTOのシステムバスルームといえば、「ほっカラリ床」「エアイン®シャワー」「魔法びん浴槽®」(※2)のサンジュウマルアイテムが評判です。今回の『サザナ』シリーズのモデルチェンジにあたってもこれを採用しましたが、その理由についてお話しください。
三上貴之「ほっカラリ床」は、いわばTOTOのお風呂の顔。タタミみたいなやわらかい踏み心地とぬくもり感、カラリと水がはけるクリーンさなどで高い評価をいただいています。「エアインシャワー」は従来比35%にもおよぶ節水性、「魔法びん浴槽」は数時間後もほとんど湯温が下がらない保温性(※3)が自慢です。
お客さまのご購入アンケートでも快適性が高く、そのうえ環境にも配慮したこの3つの機能が評価の上位にランクインしています。心地のよい入浴を多くの方々に味わっていただけるよう、『サザナ』の標準仕様として継続採用しています。
そして今回は、新たにお掃除ラクラク機能が加わりましたね。
三上これまでの浴室は、おもに今お話しした3つの機能で選ばれていたのですが、最近は「清掃性」に対するニーズも年々高まっているんです。汚れにくさとか、お掃除のしやすさですね。TOTOのマーケティング調査でも、清潔に対する意識の高まりがより顕著になっています。そこで、2016年2月1日発売の新『サザナ』シリーズは「くつろぎのサンジュウマル」をベースとして、「クリーンでうれC(うれしい)お掃除ラクラク機能」を付け加えることにしました。
追随を許さない「4つのお掃除ラクラク機能」
ではまず「お掃除ラクラク ほっカラリ床」はどう改良されたのですか。
三上 新「ほっカラリ床」は、基本的にはこれまでのW断熱構造を踏襲しています。したがってやわらかさ、ぬくもり感などはそのままですが、今回は表面に親水特殊処理を施しました。皮脂などの汚れが床に付着しても、汚れと床面のあいだに水がもぐりこんでくれます。そのため汚れが浮き上がって、従来よりも軽い力で、スッキリきれいにとれるのです。
軽い力でとれるんですね?
三上 目地のように見える溝の部分も、ほら(やってみせる)、スッキリですよ。
これは、びっくり(笑)。そして浴槽も新しくなりましたね。
三上 人大浴槽(人工大理石浴槽)の浴槽表面を、はっ水・はつ油成分を配合したアクリルウレタン系樹脂のクリア層で形成しています。それで汚れをはじくんです。浴槽の汚れはおもに皮脂などを含んだ湯あかや水あかなんですが、水あかも皮脂汚れも、ほら、みるみるうちにはじいていきます。
佐藤克仁 これまでの人大浴槽と比べても目に見える差があるでしょ。
ほんとですね。さらに、水あかが簡単に落ちる鏡もできましたね。
三上水あかはどうしてもついてしまいます。従来の鏡では、鏡と水あかの成分が化学的に結合してしまい、洗剤をつけてこすってもなかなか落ちませんでした。今回開発した「お掃除ラクラク 鏡」は、表面に炭素を成膜することで、ついた汚れが固着しないので、今までのようにゴシゴシ擦らなくても簡単に落ちるようになりました。極端な話、5年、10年とほったらかしにして固着した、頑固な水あかでも原理的にはとれるようになっています。
ワイン用ペットボトルの内壁にも使われてるんですね。
三上使われている炭素の膜はダイヤモンドライクカーボン(DLC)といって、薄くても、ダイヤモンドなみに硬い素材なんです。ワイン用のペットボトルでは、容器内部への酸素の流入や、容器外部への水蒸気・炭酸ガスの流出を防ぐ技術として、採用されています。とても薄いので、像を反射するという機能を損なわず、鏡の表面と汚れのあいだに壁をつくることができます。DLCを大面積の鏡に採用するのは、国内初の試みです。
4つめは「お掃除ラクラク カウンター」ですね。
佐藤デザインのコンセプトは「清潔感」でした。水の流れをデザインすることで、同時に空気と光もまわっていく、明るく広い清潔な空間。そこで、影ができる部分を徹底的になくしていきました。
壁や浴槽のつき合わせ部分にできる黒い線のような影ですね。
佐藤これまでのカウンターは浴槽とくっついていました。しかしどんなにくっつけても、隙間がゼロということはありえないんですね。かならず小さな隙間ができる。ゼロにならないのなら、いっそのこと離してしまえと考えたんです。
逆転の発想ですね。
三上壁や浴槽から独立させたことで、水はけもよく、汚れがたまりにくくなりました。裏にも奥にも手がまわるので、お掃除がじつに簡単です。そしてもうひとつ、佐藤さん、言いたいことがあるでしょ(笑)。
佐藤はい。つねにセットでデザインしなくてはならなかった浴槽や水栓、カウンターを、独自にデザインできるようになったわけです。極端ですが、これからはカウンターを丸くだってできる。ピンク色にだってできる。システムバスのデザインの自由度が一気に広がりました。
今までのシステムバスは、内寸を広げるというテーマを、外部にあった配管を浴槽やカウンター内部に通すことで実現してきました。TOTOがつくり出した、現在ではスタンダードな仕組みですが、内部を通すためにカウンターや浴槽などをつきあわせなければならず、パーツそれぞれのデザインに制約ができてしまいました。しかし今回は、配管を大幅にスリム化して再び外部へ移動。そのことによってデザインの自由さと、浴室内の広さを共存させることができたのです。TOTOがつくりあげてきた業界の常識をTOTOがもう一度見直すことで、新たな価値のある浴室ができたのではないかと思います。
機能も意匠も進化した「ほっカラリ床」
TOTOの「ほっカラリ床」には、長年にわたる苦心と研究を経た、技術の粋がこめられていますね。
三上2001年の初代「カラリ床」は、固いプラスチック素材でつくっていました。細かい直線に曲線を加えたパターンによって、水をじわじわゆっくり排水口に導くシステムです。翌日は靴下を履いたままでも、カラリと濡れない床を実現しました。
それ以前は、滑りにくさを主眼に凹凸のある床を開発していたのですが、凹凸があると水が残ってしまい、かえって滑りやすく、汚れもつきやすくなっていました。その排水の問題を改善したのです。結果、ちょっと変わった表面のデザインになりましたから、当時、「カラリ床」はかなり話題になりました。
そして、その次の開発は2008年。細かい溝に汚れが残るというお客さまの声に応えて、パターンをタテヨコの直線基調にしてブラシでのお掃除をしやすくしました。
佐藤デザインも、もっと自然の風合いを加えていこうということになったんです。床は大きい面積を占めるので、全体の印象を左右する重要な部材です。小さなマス目にそれぞれ表情の違う岩肌のようなデザインを施しました。
そして2012年から「ほっカラリ床」になるわけですね。
三上当時のTOTOの最上位グレードの『スプリノ』というシステムバスルームで採用していた「ソフトカラリ床」が、「やわらかい」うえに、断熱効果で「冷たくない」、グリッド効果で「滑りにくい」などと、想定以上にお客さまに好評でした。上位グレード商品用につくり込んでいたので、まったく同じものを『サザナ』に導入することはできなかったのですが、同じような機能を『サザナ』でも実現したいと考えていました。
「カラリ床」は剛性、導水性などの機能を一枚の床材でつくり出していたのですが、それらの役割を分散して、適材適所の材料を使うことにしました。表皮では「カラリ」性能、やわらかさと断熱を二重のクッション層、力がかかる下層の土台部分はスチール製の構造体にまかせ、それぞれコストパフォーマンスの高い部材を用いて、機能は向上させつつ総コストをおさえたんです。
材料構成を増やしてコストを下げる。これも逆転の発想ですね。
佐藤分散したことで、一番上の表皮の自由度が高まり、デザインの可能性が一気に広がりました。「ほっカラリ床」の基本構造、つまりレイヤー構造ができたことが、TOTOのバスルームの大きな分岐点になったのです。
初代のカラリ床と比べると、デザインも大きく変わりましたね。
佐藤特徴的な意匠の初代カラリ床は機能から生み出されましたが、カラリ性能を維持しつつデザイン性を高めるパターンの研究が進み、徐々にデザインが改良されました。2014モデルでは、「やわらかさ」を視覚的にも感じていただくためにグリッド一つひとつの表情を変え、さらに光の反射のしかたも変えました。
三上角が立っているところがあったり、寝ているところがあったり。
佐藤それでやわらかさを出しているんです。肌触りだけでなく視覚的なやわらかさも追求しているというわけです。そして、最新の「お掃除ラクラク ほっカラリ床」につながっていきます。
最初から一丸となってゴールへ
佐藤さんも三上さんも同じ30代、今回の開発はスムーズにいきましたか。
三上一方的にはならないし、助言を求めたらすぐ返ってくる。そういう意味ではバランスのいいチームだったと思います。
佐藤最初の段階で、デザインのプロトタイプに開発者のみなさんの多くが同意してくれました。開発者もこれでいこうという気になってくれた。一丸となれたのは大きいです。設計が決まるまで、私は週の半分以上、事業部に出向きました(笑)。だから私は中の構造まで全部知っているし、逆に設計者もどうすればより美しい形状をつくり出せるのかという、デザイン部と同じ視点をもって考えてくれます。
三上構造的にきびしかったら企画段階で却下されるのが普通ですが、デザインコンセプトの共有が早い段階で出来上がったことが、うまくいった原因かもしれませんね。
佐藤同じ方向を向いて、それぞれがベストなアウトプットを出して、コラボできるところは一緒にやる。デザインも開発もお客さまの声を聞いて長年やっています。求められていることは同じ。そこがぶれないから、ゴールも一緒なんです。
※1/JIS規格による。
※2/『サザナ』標準仕様の「ほっカラリ床」「エアイン」「魔法びん浴槽」はTOTOの登録商標です。(Nタイプは除く)
※3/プレミアムHGシリーズ:5時間で温度低下2.5℃以内/HSシリーズ:4時間で温度低下2.5℃以内。
Mikami Takayuki
みかみ・たかゆき/TOTO㈱浴室事業部浴室開発部浴室商品開発グループ。1983年埼玉県生まれ。2006年東京理科大学理工学部建築学科卒業後、TOTOバスクリエイト㈱入社。浴室開発部、浴室エンジニアリング企画部を経て、12年より現職。
Sato Katsuhito
さとう・かつひと/TOTO㈱デザイン本部プロダクトデザイン部第一デザイングループデザイナー。1979年東京都生まれ。2002年多摩美術大学美術学部生産デザイン学科卒業後、食器メーカーを経て、05年TOTO㈱入社。以来、現職。