井川さんに設計時の苦労を問うと、「最初から丸井さん側の照準がはっきり定まっていてデザインがぶれることがなかったので、自然に物語が出来上がるように設計が進み、苦労はなかったですね。ただ最初は女性の心理がよくわからず、いろいろ勉強させられました」と苦笑い。顔を美しく見せる洗面コーナーの照明手法や、化粧しやすい鏡の距離感など、ディテールにまで気を配ったそうだ。
ちなみに、お三方に好評だったのが、TOTOのパブリックトイレ「RESTROOM ITEM 01(ゼロワン)」。すっきりしたデザインの大便器や小便器もさることながら、「とくに多目的トイレがいいですね。今まではどうしても器具の『寄せ集め感』が避けられませんでしたが、01はプロダクトとして完成しています」とは井川さんの弁。
広さ、上質さ、機能に、緑のヒーリング効果まで加わり、今やホテルに勝るとも劣らぬレベルに達したトイレの登場によって、今後、商業施設の水まわりはますますグレードアップしていくことだろう。「この街に来たらあの店のあのパウダーコーナーに寄って帰ろう」といった具合に、行きつけのトイレをもつ女性も増えてくるかもしれない。