不動産の強みを生かした新たな方向性の模索

 ノーブルホームの主力商品は坪単価45万〜50万円で、「ミドルコスト」と呼ばれる。「ちょっとぜいたくな普通の家」といった感じだろうか。比較的土地も家も大きいという地域性に配慮もしている。部材や部品の選択肢の多さ、耐震性や断熱性などの性能面の充実ぶりは、現場のお客さんからの要望が丁寧に反映していることをうかがわせる。
 ただ、商品バリエーションは「組織の体制がしっかりしてから、もっと増やしたい」と慎重な姿勢も忘れない。この慎重さは経営姿勢にも通じ、たとえばメリットであるはずの不動産事業を長く禁じてきたのもそのひとつ。「体力のないうちに土地を扱おうとすると、高金利の融資に頼らざるをえないから」。そのために「注文住宅の受注だけ」で内部留保を増やすことに腐心してきた。現在の大不況にも「影響はあるでしょう。でも好景気のときにはいい影響を受けたはずだから」と意に介する様子がないのは、着実に会社の地力を蓄えてきた自負があるからだろう。
 3年ほど前、その不動産の封印を解いた。土地分譲を行いつつ、その一画にコンセプト住宅を建てて多くの人に見てもらい、最終的には気に入ってくれた人に土地・建物込みで販売する試みなどを始めている。市場調査、展示場以外のモデルルームの役割、建て売り住宅という新たな挑戦への布石。新しい取り組みには周到な計算がある。売り上げ減少への対症療法ではなく、次のステップへ向けての戦略を感じさせる。
 福井さんと話をしていると、いわゆる体育会系の“熱さ”は感じない。強いて印象を言うなら、いつも最善の方向性を探して悩みつづけている、という姿勢。そしてスタッフに対するまなざし。過去10年、業績が伸びた理由について、「今幹部クラスになっている社員ががんばってくれた、ということでしょうね」とさらりと言う。作戦を練るのは監督(経営者)でも、実際にプレーして結果を残すのは選手(社員)、ということか。

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