6カ月ごとの継続点検

 創業者としての畑中さんの会社は、ある意味、父上の会社を「反面教師としている」と言う。そのセオリーのひとつが「建築条件付き土地販売をしない。やれば儲かるのはわかっているけれど、その道はとらない」。
 注文住宅の建築に特化した。「大きな金儲けはできないかもしれないけれど、バブルの二の舞いはしたくない」。と同時に「つくる喜び、顧客に心底喜んでもらえる喜びがある道を選んだ」。商売は嫌いなのではない。「ビジネスはゲームのようなところがある。努力がみのり、売り上げが上がっていくのは楽しい」と。ビジネスを楽しむ力もエネルギーになっている。
 販売する住宅を徹底的に研究開発した。高断熱高気密。ただし、いわゆる高断熱高気密とは違う。外断熱工法による高性能住宅をすべて自分で検証し実験し、開発していったもの。どこのフランチャイズにも入らない。新しいビジネスモデルといえるだろう。さらに、6カ月ごとの継続点検。その家が存在する限り続ける。「不可能だ、つぶれるよ」という声をよそに徹底した。これが顧客の心をとらえた。
 それが成功という結果につながっている。創業10年で年間90棟。26億円の売り上げ。今、財務の充実を図っている。「長い目線で仕事をしていきたいから」。注文住宅専門としては「健康住宅」はすでに福岡県内でトップグループ。わずか10年で強力な住宅会社に育て上げた。
 理念だけの人ではない。一つひとつ積み上げている。たとえば毎朝のご近所掃除。社員50人全員で8時30分から15分間の掃除。「50人でやるとけっこう広く掃除ができます」と。8時50分から朝礼。「掃除はその場をきれいにし、その人の心をきれいにし、それを見ている人の心をきれいにする」という認識がある。
 現在の住宅建築事業の先行きは決して明るいばかりではない。しかし「福岡はすばらしい」と言う。「九州新幹線も開通して九州経済圏は福岡に一極集中化してきている。こんなすばらしいマーケットはない」と。とはいえ「右肩上がりのマーケットはもはや期待できない」とも。「売り上げを伸ばすより財務体質を強固にすることが今大切なこと」という読みがある。無理がない、自然体の試みがここにはある。

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