展覧会コンセプト
⽣きた全体――A Living Whole
ひとつの建築をつくる時、
その建築を含む「生きた全体」をどのように考えられるでしょうか。
営みの全体
建築をつくるという営みは、私たちが生きることそのものです。その場所にふさわしい建築を、人々とともに掘り起こし、考え、つくり、育てていく。私たちは、そうした営みをも含めた全体を、建築だと捉えています。
空間的全体
建築をつくると、その内側にひとつの世界が生まれます。一方で、建築はその外側の世界にとっての一部分です。もしも建築が、内側と外側の世界をつなぐ存在となりえるならば、小さな居場所から大きな環境までを連続的に捉えることができます。建築をつくるとは、スケールを横断して、単体では取り出せないひとつながりの関係性を生み出すことです。
時間的全体
建築は、今目の前にあるものとしてだけではなく、過去、そして未来の建築とともに存在しています。それゆえに、ひとつの建築の中には過去と未来の人々の生が含まれます。建築の材料ひとつにもまた、土地の一部として育まれてきた長い時間が内包されています。そのように、過去、現在、そして未来の人々、さらにはその土地の時間とつながる建築を、私たちは今、どのようにつくることができるでしょうか。
存在のかけがえのなさ
建築を含む「生きた全体」を考える時、私たちは、建築を自然から離れた人工物というよりは、生き物として捉えるところから始めてみたいと思います。人間にコントロールされるものとしてではなく、自立した存在として建築と向き合うことで、その存在を機能や性能で測ることを超え、欠点や未完成な部分も含めて愛しみ、育てていくことができます。建築を生き物と捉える視点は、建築の存在論的意味を問い直す試みです。
ひとつの建築をつくる時、その建築を含む「生きた全体」をどのように考えられるでしょうか。その問いを、多くの人々とともに、考え続けていきたいと思います。
大西麻貴+百田有希 / o+h