展覧会に併せて開催されたギャラリートークは、増田さんと大坪さん(以下、増田+大坪)自身が企画者となり、ぜひ話を聴いてみたい建築家を招いて対話をする、というものでした。そこで、おふたりいわく「設計への姿勢の正しさに影響を受けている」建築家、乾 久美子さんをお招きしました。
3人の対話は、乾さんの作品から増田+大坪が選んだ「御殿場のアウトレットブティック」(2003年)、「共愛学園前橋国際大学4号館 Kyoai Commons」(2012年)、「ハウスO」(2015年)、「釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校・釜石市唐丹児童館」(2017年)という初期から近作への流れを中心に展開し、乾さんの建築への姿勢と増田+大坪との共通点、そして乾さんの建築観の変遷にまで話が及んでいきました。
乾さんは、「場の診断(Attitude)」から「場の転換点の設計(Adaptation)」を行う増田+大坪と、自身が東京藝術大学でおこなったリサーチ「小さな風景からの学び」*との共通点を挙げ、どちらも「設計の意味を見出すために大切な行為」と、場の観察、そして建築の構成が物質性を伴うことの重要性を語りました。そして、初期の取り組みから大震災を経て大規模な公共建築に携わる現在までの過程のなかで、徐々に建築家個人の達成感よりも、「ただ人びとにとってすばらしい場所が生まれてくれればよい」という無私の願いに変わっていったという、自身の「姿勢(Attitude)」の変化が語られました。それは、増田+大坪への共感の言葉であるとともに、同じく真摯に建築設計に向き合ってきた先輩から後輩への、大きなエールでもありました。(主催者記)
(*2014年TOTOギャラリー・間にて
展覧会、TOTO出版より
書籍発行)