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中山英之展 , and then

中山英之展 ギャラリートーク「a night in CINE-MA」
会期中、期間限定の架空の映画館「CINE間(シネマ)」となる会場で、上映作品の関係者や各界で活躍される方々との8回の対話を通じて、ゲストと中山英之氏に、映画や音楽、そして建築を横断する思想や哲学、方法論やこの先の創造の可能性をお話いただきます。
開催日時、出演者
第1回:6月7日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「mitosayaの3人と3年」
出演:江口宏志(蒸留家、mitosaya 薬草園蒸留所オーナー)、山野英之(グラフィックデザイナー)×中山英之
"ドイツでの構想から日本各地での候補地探し、千葉県大多喜町の元薬草園を蒸留所に改修…。蒸留所作りの歩みを共にした3人が、建築家、アートディレクター、蒸留家、それぞれの立場からmitosayaの3年を語り合う夜。"
第2回:6月14日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「漂流する映画館、ふたたび」
出演:藤原徹平(建築家)×中山英之
"建築にとどまらず、「漂流」をキーワードにパフォーマンス・ファッション・アートなどさまざまな分野を横断する一般財団法人「ドリフターズインターナショナル」の主催者でもある藤原徹平さんと、「映画」という船に乗って漂流する夜。"
第3回:6月21日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「建築のない映画館」
出演:安藤桃子(映画監督)、有坂塁(移動映画館キノ・イグルー主宰)×中山英之
"2021年のリニューアルオープンに向け現在は箱のないかたちで活動中の映画館「ウィークエンドキネマM」(高知)を主宰する安藤桃子さんと、今夜もきっと日本のどこかで映画を上映している旅する映画館「キノ・イグルー」主宰の有坂塁さんをお迎えしての、「建築のない映画館」の話。"
第4回:6月28日(金)18:30~20:30 開催終了 映画上映会「ウィークエンドキネマMの夜」
出演:中山英之  ※安藤桃子さんはビデオ出演を予定
上映作品:『椿山 焼畑に生きる
"安藤桃子さんが「建築好きのあなたに贈るこの1本」を皆で鑑賞する、一夜限りのウィークエンドキネマM@CINE間!安藤さんの解説も聞けます。"
第5回:7月5日(金)18:30~20:30 開催終了 映画上映会「キノ・イグルーの夜」
出演:有坂塁(移動映画館キノ・イグルー主宰)×中山英之
上映作品:『冬の光
"有坂塁さんが「建築好きのあなたに贈るこの1本」を皆で鑑賞する、一夜限りのキノ・イグルー@CINE間!有坂さんの解説も聞けます。"
第6回:7月12日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「想像力の労働、そのはなしの続き」
出演:濱口竜介(映画監督)×中山英之
"2011年、横浜の元銀行だった建物で行われた濱口竜介さん(映画監督)との対話の続き。前回のキーワードは「想像力の労働」。今回はいかに!"
第7回:7月19日(金)18:30~20:30 開催終了 ポエトリーリーディング「建築詩(声で建てる家)」
出演:菅原 敏(詩人)×中山英之
"目下ひみつの共同プロジェクトが進行中の詩人、菅原敏さんがCINE間に建てる「建築詩」とは?"
第8回:7月26日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「例外音楽/建築論」
出演:岡田栄造(京都工芸繊維大学教授)、野口順哉(音楽家)、佐々木 敦(批評家)×中山英之
"CINE間で上映されるショートフィルム「O邸」を監督した岡田栄造さん(京都工芸繊維大学教授)、曲を書き下ろしてくれたバンド「空間現代」の野口順哉さん(ギター/ボーカル)、そして佐々木敦さん(批評家、HEADZ主宰)による、例外音楽/建築論!"
スペシャル回(第9回):8月2日(金)18:30~20:30 開催終了 トークイベント「続 人間と建築」
出演:石上純也(建築家)、長谷川豪(建築家)×中山英之
司会:西牧厚子(新建築住宅特集 編集長)
"3人の建築家が互いについて書き、新建築『住宅特集』2017年6月号に掲載された論文「人間と建築」。トークシリーズの最後は、同じ3人がもう一度集い、この展覧会と「建築」を改めて問う夜。"
イベント概要
会場
TOTOギャラリー・間
港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル 3F
定員
各回50名
参加方法
事前申し込み制/入場無料
※申し込み先着順受付。定員になり次第、受付を締め切らせていただきます。

お問合せ
TOTOギャラリー・間
TEL.03-3402-1010
ご注意事項
※プログラムは予告なく変更することがございます。
※展覧会場内での開催となります。トーク開催中は一部の展示がご覧いただけません。
※お座席は自由席となります。尚、お座席数には限りがございますので、立ち見となる場合がございます。
※ギャラリートーク中の撮影、録音はご遠慮願います。
ギャラリートーク ゲストプロフィール
江口宏志(えぐち ひろし)
蒸留家。ブックショップの経営やアートブックフェアの運営に関わった後、2015年に蒸留家へと転身し、2018年に千葉県大多喜町の元薬草園を改修し、果物や植物を原料とする蒸留酒、オー・ド・ビーを製造する「mitosaya 薬草園蒸留所」をオープンした。
WEBサイト mitosaya.com
山野英之(やまの ひでゆき)
グラフィックデザイナー。奈良県生まれ。京都工芸繊維大学大学院修士課程修了。2009年、デザイン事務所 TAKAIYAMA inc. 設立。書籍、広告、ブランドデザイン、建築サインなど、平面から空間まで、グラフィックデザインを軸に活動。
個人の制作として「クソバッジ」、「B.C.G」、「ALL FREE」、「YAMANOMAX90」、「UHS-α」など。
WEBサイト takaiyama.jp
藤原徹平(ふじわら てっぺい)
建築家。横浜国立大学大学院Y-GSA准教授、フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰、一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事。 1975年横浜生まれ、横浜国立大学大学院修士課程修了2001年~隈研吾建築都市設計事務所勤務、設計室長・パートナーを経て2012年退社。2012年より現職。一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事、宇部ビエンナーレ審査員・展示委員・運営委員。
主な作品に「等々力の二重円環」、「代々木テラス」、「稲村の森の家」、「2017横浜トリエンナーレ会場デザイン」、「那須塩原市まちなか交流センター」など。著書に『7inch Project〈#01〉TeppeiFujiwara』(ニューハウス出版、2012年)、共著に『アジアの日常から』(TOTO出版、2015年)、『応答 漂うモダニズム』(左右社、2015年)など。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞 日本建築士会連合賞奨励賞、東京都建築士会住宅建築賞、日本建築学会作品選集新人賞など。
安藤桃子(あんどう ももこ)
映画監督。1982 年、東京都生まれ。2010 年『カケラ』で監督・脚本デビュー。2011 年、初の長編小説『0.5 ミリ』を出版。同作を監督、脚本し、第39回報知映画賞作品賞、第69回毎日映画コンクール脚本賞、第18回上海国際映画祭最優秀監督賞などその他多数の賞を受賞。2018年 ウタモノガタリ CINEMA FIGHTERS project『アエイオウ』監督・脚本。
高知県の映画館「ウィークエンドキネマM」代表。「表現集団・桃子塾」、塾長。現在は高知県に移住し、チームと共に映画文化を通し、日本の産業を底上げするプロジェクトにも力を注いでいる。
また情報番組「news zero」ではゲストコメンテーターとしての出演や「ブレスラボ」のCM出演、自然派化粧品「江原道」のイメージキャラクターを務めるなど、活動の幅を広げている。

©Ittetsu Matsuoka
有坂 塁(ありさか るい)
移動映画館キノ・イグルー主宰。
2003年に渡辺順也とともにキノ・イグルーを設立。 東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界国の映画を上映している。2016年からは映画カウンセリング「あなたのために映画をえらびます」や、思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」をおこなうなど、自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
WEBサイト http://kinoiglu.com
Instagram @kinoiglu
濱口竜介(はまぐち りゅうすけ)
映画監督。1978 年、神奈川県生まれ。2008 年、東京藝術大学大学院映像研究科修了制作『PASSION』が国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。その後も、震災後の東北を写した記録映画『なみのおと』、『なみのこえ』、『うたうひと』(共同監督:酒井耕)、5 時間を超える長編ドラマ『ハッピーアワー』(2015年)など、地域やジャンルをまたいだ精力的な制作活動を続けている。2018 年、カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも出品された最新作『寝ても覚めても』は世界各国で公開された。
菅原 敏(すがわら びん)
詩人。2011年、アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』で逆輸入デビュー。執筆活動を軸に、異業種とのコラボレーション、ラジオやテレビでの朗読、欧米やロシアでの海外公演など広く詩を表現。Superflyや合唱曲への歌詞提供、美術家とのインスタレーションなど、音楽やアートとの接点も多い。現在は雑誌「BRUTUS」、「COZIKI」他で連載。近著『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞出版局、2017年)。東京藝術大学デザイン科 非常勤講師。
WEBサイト http://sugawarabin.com/
岡田栄造(おかだ えいぞう)
京都工芸繊維大学教授、KYOTO Design Labラボラトリー長。デザインディレクターとしてグッドデザイン賞、Red Dot賞など受賞。編著書に『海外でデザインを仕事にする』(学芸出版社、2017年)など。

©Michinori Aoki
野口順哉(のぐち じゅんや)
音楽家。1985年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒。2006年、在学中にバンド「空間現代」を結成。ギターボーカルとして作曲に携わるほか、作詞も行う。2009年にレーベルHEADZより1stアルバムをリリースして以降、精力的にライブ活動を続ける。2016年からは活動拠点を京都に移し、空間現代のスタジオ兼ライブハウス「外」を左京区錦林車庫前に開場。
佐々木敦(ささき あつし)
批評家。HEADZ主宰。芸術文化の諸ジャンルを貫通する批評活動を行なっている。
著書多数。近著として『アートートロジー』(フィルムアート社、2019年)、『新しい小説のために』(講談社、2017年)、『筒井康隆入門』(星海社、2017年)など。
HEADZから「空間現代」の作品をリリース。『例外小説論―「事件」としての小説』(2016年)所収の「はじめての小説論」で中山英之に言及した。
石上純也(いしがみ じゅんや)
建築家。1974年生まれ、神奈川県出身。東京藝術大学大学院修士課程修了後、妹島和世建築設計事務所を経て、2004年石上純也建築設計事務所を設立。2009年に日本建築学会賞(作品)、BCS賞(建築業協会賞特別賞)、2010年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞および毎日デザイン賞、2019年に芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)など、数々の賞を受賞。現在、モスクワ科学技術博物館の増改築やシドニー再開発の新モニュメントに選ばれるなど、世界各国で活躍中。
長谷川豪(はせがわ ごう)
建築家。1977年埼玉県生まれ。2002年東京工業大学大学院修士課程修了。西沢大良建築設計事務所勤務後、2005年長谷川豪建築設計事務所設立。2015年東京工業大学大学院博士課程修了 (工学博士)。東京工業大学非常勤講師、メンドリジオ建築アカデミー客員教授、オスロ建築デザイン大学客員教授、カルフォルニア大学ロサンゼルス校客員教授を歴任。現在ハーヴァード大学デザイン大学院(GSD)客員教授。主な受賞にSD Review 2005鹿島賞、東京建築士会住宅建築賞金賞、第24回吉岡賞、AR Design Vanguard2014など。近刊に『El Croquis 191, Go Hasegawa 2005-2017』。
映画上映会 作品紹介
第4回:6月28日(金)18:30~20:30(予定)映画上映会「ウィークエンドキネマMの夜」にて上映
『椿山 焼畑に生きる』(1977年 日本 95分)
監督:姫田忠義
内容:焼畑とは森林もしくは草地などを刈払い、その土地の地力と、火を入れ焼いた灰を肥料として作物をつくる農耕法。高知県池川町椿山の焼畑は、前年の夏に木を伐って春に焼く「春山」と、夏に木を伐ってすぐ焼く「夏山」とがある。3年から5年作物をつくって山に返し、20~30年の周期でもとの場所に帰る。その様子をおさめた記録映像。キネマ旬報 文化映画ベストテン2位。
©民族文化映像研究所
©民族文化映像研究所
第5回:7月5日(金)18:30~20:30(予定)映画上映会「キノ・イグルーの夜」にて上映
『冬の光』(1963年 スウェーデン 82分)
監督:イングマール・ベルイマン
出演:グンナール・ビョーンストランド、マックス・フォン・シドー
内容:『鏡の中にある如く』、『沈黙』とともに"神の沈黙"三部作。主人公の牧師の苦悩を通して、「神の不在」を描き出す。信者の男が終末への恐怖から自殺するが、牧師はただ祈ることしかできない。神は何故沈黙したままなのか?
これを最高傑作とする声も多い、自伝的要素を色濃く反映したベルイマン入魂の作品。
ギャラリートーク開催報告
「中山英之展 , and then」会期中の毎週金曜、全9回にわたって開催されたトークイベント「A NIGHT IN CINE-MA」は、上映されたショートフィルムを撮影した施主や、オリジナル・スコアをつけた音楽家だけでなく、プロフェッショナルな映画監督や移動映画館の館主など、「映画」にまつわる多彩なゲストを迎えて開催されました。また、建築をテーマにセレクトされた映画の上映会や、建築家によるライブ・ドローイングを背景にした詩人によるポエトリー・リーディング(サイレント映画時代の活動弁士に見立てられた)など、トークにとどまらないさまざまなプログラムが毎夜繰り広げられました。

たとえば「建築のない映画館」と題され、仮設映画館「ウィークエンド キネマM」の代表である映画監督の安藤桃子さんと、移動映画館「キノ・イグルー」主催の有坂塁さんをお招きした第3夜。話題は、建築家なしで魔法のような劇場空間を出現させてしまうおふたりの仕事への、建築家の憧れについて。
周囲の騒音がそのまま聞こえてしまうような屋外上映会であっても、むしろそうであるからこそ、あるときには風が吹き抜け、またゆっくり日が暮れていく時間をしばし共有する観客たちのあいだに、眺めている映画の世界と溶け合った不思議な一体感が生まれる。実際、映画『雨に歌えば』上映中に本当に雨が降ってきてしまったときなど、濡れながらも誰ひとり帰ろうとしなかったそうです。サイレンやヘリコプターの音が入ってくる劇場の設計なんて、到底許されようもない建築家にとって、そんな奇跡的な瞬間は遠い憧れなのです。けれども、そんな建築家からのジェラシーの表明に対する有坂さんの答えはこうでした。「映画の時間はどこまでいっても非日常で、それが存在できるのは日常があるからです。そして日常こそ、建築家にしかつくることのできない時間でしょう。」

また、映画監督の濱口竜介さんをお迎えしての第6夜は、濱口監督による「想像力の労働」と題された1時間のショートレクチャーから始まりました。カットを挟んで切り替わる映画のショットとショットのあいだを、無意識のうちに結びつけながら映画を観るとき、私たちの頭の中ではいったいどんな事が起こっているのか。それは映画監督が、観客の内面にそれと知らぬうちに立ち上げる、画面には映っていないもうひとつの世界であるとも言える。映画史の中から選び抜かれたさまざまなシーンが次々紹介されるうち、私たちは徐々にその不思議を理解し、同時に監督たちの企みにめまいを起こすことになるのでした。話題はさらに、そんな中のひとりの映画監督とよく似た建築家について展開していくことになるのですが、ここではとても紙数が足りません。

映画と建築。分野は違うけれど共通する思考や方法、哲学や思想は多く、映画の話題がいつの間にか建築の話題になり、それがまた映画の話題にと、トークは分野を行き来しながら、毎回あっという間の2時間でした。建築に興味をもつようになった頃、その言語性のようなものに魅せられ、導かれるように知るようになった、建築とは異なる世界のことば。そうしたことばがまた、建築を考えることばを導く。そんな興味はいつしか映画だけに限らず、音楽や文学、演劇やダンスなど、さまざまな分野にひろがっていきました。もしかしたら、この展覧会や「A NIGHT IN CINE-MA」で通じて最も伝えたかったのは、建築を好きになることで、そんなふうに自分にとって世界がひとつ、始まった、その素晴らしさだったのかもしれません。

「A NIGHT IN CINE-MA」支配人 中山英之
第3回:トークイベント「建築のない映画館」
第6回:トークイベント「想像力の労働、そのはなしの続き」
第7回:ポエトリーリーディング「建築詩(声で建てる家)」
第7回:ポエトリーリーディング「建築詩(声で建てる家)」
第8回:トークイベント「例外音楽/建築論」
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