TOTO

クリスチャン・ケレツ展 The Rule of the Game

出展者について
出展者メッセージ
The Rule of the Game

ある明確なルールに基づいて建築を規定すれば、いたって抽象的かつ普遍的な方法で建物を思い描けるようになる。私はプロジェクトごとにルールを設けることで、単にヴォリュームの形状や、内部空間のサイズやプロポーションを整えるといった審美的な判断だけで建物をデザインするようなことを避けてきた。そのルールに従うと、個人の嗜好とはいっさい関係のないところで、建築は抽象的に規定される。建築の原理・原則を決めるのがルールである。そのルールがあれば、建築の法規や基準といった副次的な事柄にはいっさい惑わされずに、その向こうにあるはずの建築の意味が見えてくる。

今回展示されるコンセプト模型は、なにもリアリティに近づけようというものではない。むしろ模型には模型固有のリアリティがあり、そこにはなにか抽象的なものが具象化される。模型を通すとプロジェクトの背景にある理念が見えてくる。模型を、コンセプトの見取図ともみなせる。つまり模型は、複雑な事象を単純化してとらえるのに役立つ。となるとそれは、抽象的かつ具体的、理念にして対象でもある。そこには間接的にリアリティが再生される。それを使えば、理念をまた別の形式で、すなわち具体的な形式で考察できるようにもなる。
クリスチャン・ケレツ
プロフィール
クリスチャン・ケレツポートレート©Karin Hofer/NZZ
©Karin Hofer/NZZ
クリスチャン・ケレツ Christian Kerez

1962年、ベネズエラのマラカイボ生まれ。スイス連邦工科大学チューリヒ校で学び、建築写真家として多くの作品を発表後、1993年にスイスのチューリヒに建築事務所を設立。2001年よりスイス連邦工科大学チューリヒ校建築学科の講師を、2003年より同助教授を務め、2009年に正教授に選任される。2012~13年度にハーバード大学大学院デザイン学部 丹下健三記念客員教授を務める。実作に「フォースター通りのアパートメント」(チューリヒ、2003年)、「壁一枚の家」(チューリヒ、2007年)、「ロイチェンバッハの学校」(チューリヒ、2009年)など。現在はサンパウロの公営住宅や中国の高層オフィスビルが進行中。
TOTO出版関連書籍
著者=クリスチャン・ケレツ