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中村好文展 小屋においでよ!

出展者について
出展者メッセージ

32歳で独立してから30数年間、おもに住宅設計と家具デザインの仕事をしてきました。そのあいだに、レストランやカフェを設計したり、小さな美術館や個人記念館などを手がけたりもしましたが、仕事のほとんどは住宅設計でした。

「ビッグプロジェクトには見向きもせず、住宅ひとすじに……」と言いたいところですが、実際には「ビッグプロジェクトの方が、ぼくに見向きもしなかった」というのが本当のところです。ただ、このことは私の「望むところ」でした。もともと、建築家としての私の最大の関心事は「人のくらし」と「人のすまい」でしたから、身の丈を越えた大きな仕事を抱えて右往左往することなく、心おきなく住宅の仕事に取り組むことができたのは幸いでした。

ところで、私の「人のくらし」と「人のすまい」への関心は、「住宅ってなんだろう?」を考えることでもありました。ある時期からは住宅の原型が「小屋」にあるような気がしはじめて、南仏のル・コルビュジエの休暇小屋や、ロンドン郊外のバーナード・ショーの小屋や、岩手県花巻の高村光太郎の小屋など、古今東西の小屋を世界各地に訪ね歩く旅を繰り返してきました。そして、8年ほど前からは、エネルギー自給自足を目指す私自身の小屋(「Lemm Hut」2005年、長野県)で、自然の恵みと自分自身に向かい合う質素な小屋暮らしを愉しむようになりました。

「小屋においでよ!」と題した今回の展覧会は、そんな小屋好きの建築家が敬愛をこめて「小屋」に捧げるオマージュです。

会場では、長いあいだ、私の心の中に住み続けてきた古今東西の小屋の名作について語るとともに、これまで私の手がけてきた「小屋」と「小屋的な住宅」を紹介します。そして、中庭にはこの展覧会を象徴する ひとり暮らしのための「究極の小屋」を展示します。

この展覧会が、来場者のひとりひとりにとって、小屋を通じて「住宅とはなにか?」を考えるまたとないきっかけになってくれますように……。
プロフィール
中村好文ポートレート©雨宮秀也
©雨宮秀也
中村好文 Yoshifumi Nakamura

1948年千葉県生まれ。72年武蔵野美術大学建築学科卒業。72~74年宍道建築設計事務所勤務の後、都立品川職業訓練所木工科で家具製作を学ぶ。76~80年吉村順三設計事務所勤務。81年レミングハウス設立。99年~日本大学生産工学部建築工学科教授。

1987年「三谷さんの家」で第1回 吉岡賞受賞、93年「一連の住宅作品」で第18回 吉田五十八賞「特別賞」受賞。

主な作品に、「三谷さんの家」(長野県、1985年)、「上総の家Ⅰ、Ⅱ」(千葉県、1991年、1992年)、「museum as it is」(千葉県、1994年)、「扇ガ谷の住宅」(神奈川県、1998年)、「ReiI Hut」(栃木県、2001年)、「伊丹十三記念館」(愛媛県、2007年)、「明月谷の家」(神奈川県、2007年)など。

著書に、『住宅巡礼』、『住宅読本』、『意中の建築 上・下巻』(以上新潮社)、『普段着の住宅術』(王国社)、『住宅巡礼・ふたたび』(筑摩書房)、『中村好文 普通の住宅、普通の別荘』(TOTO出版)など。共著に、『吉村順三 住宅作法』(吉村順三と共著、世界文化社)、『普請の顛末』(柏木博と共著、岩波書店)などがある。
TOTO出版関連書籍
著者=中村好文
写真=雨宮秀也