2023年8月31日
水道から直接流れる水と、内蔵タンクから加圧されて流れる水。このふたつの水によってパワフルな洗浄、節水・省エネ、低水圧でどこでも設置可能、やわらかい便器洗浄音を実現したハイブリッドエコロジーシステム。この技術は、当時の6ヶ月という常識では考えられない非常に短い期間で開発されたのです。
セフィオンテクト、トルネード洗浄と、様々な技術とともに進化してきたネオレスト。多くの方にもご好評いただいていましたが、戸建て住宅の2階や高層マンションの高層階など水圧が低い場所では使えないという問題がありました。
朝、夜など周辺の人たちが一挙に水を使う時間帯、家でお風呂を入れ始めた時など、突然水圧が落ちることがあります。その瞬間、トイレの汚物が流れないという現象が起こるのです。
だから、業者の人たちはタンク式タイプをお客さまに勧め、ネオレストの採用が避けられてしまう。
そんな問題を解決するための挑戦が、「どこにでも設置できるネオレスト」だったのです。
低水圧という問題を解決するために最初に考えたことは、「水道から直接流れる直圧水道水だけではだめだ」ということ。
これまでのネオレストは、便器内を洗浄する水と汚物を排出する水の両方が、直圧水道水でした。
1本をふたつに分けただけなので、水圧が落ちれば影響が出るのは当然のこと。
だから、汚物排出用の水を別に用意することにしたのです。タンクを便器に内蔵することで、直圧の水道水でトルネード洗浄を行い、ポンプで加圧したタンクの水で洗浄・排水を行うというハイブリッド式を目指しました。
必要な貯水量3ℓのタンクを便器内に組み込む際、問題となったのが「加圧」でした。汚物の排出には、大きな加圧は必要なかったのですが、ちょうどいい加圧ができる小型ポンプがなく、ポンプの開発にはかなりの時間を費やすことになりました。
また、従来は便器上部に埋まっている水流の制御装置を便器内部に納めなければならないことも課題でした。水に弱い電気部品を便器内部に埋め込むことは、当時、かなり困難なことだったのです。
さらに、ハイブリッド化したことで、2箇所から出る別種類・別系統の水の「水流と水量」の関係がとても難しくなりました。この調整は机上の計算だけではできません。実験の積み重ねにより、大の使用水量5.5ℓという数字を実現することができました。
TOTO初の機能となったハイブリッドエコロジーシステムですが、開発にかかった期間はわずか6ヶ月。それを可能にしたのが、3DCADとその設計に連動する工作機械です。複雑な形の便器も、3Dデータに基づき、紫外線を当てることで硬化する樹脂を積層して部品を作る「光造形技術」によれば、短時間で正確に作り上げることができます。
流れを確認する試作モデルをこの光造形による部品などを組み合わせて作ることで、製作・実験のスピードが上がり、6ヶ月という通常では考えられない短期間で開発することができたのです。
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