2023年3月3日
釉薬の上に特殊なガラス層を焼き付けることで、陶器表面の凹凸を100万分の1mmのナノレベルで超平滑に仕上げた「セフィオンテクト」。
様々な試行錯誤で生まれたナノレベルの新素材は、「抗菌」をきっかけに誕生しました。
「画期的な防汚技術を開発せよ!」1998年に入って新たなプロジェクトが立ち上がりました。この時代、世の中は抗菌ブーム。TOTOはすでに「銀」を使った抗菌衛生陶器を販売していましたが、「銀以外の物質で、もっとすごい抗菌効果が出せないか?」という検討から始めてみることにしました。
まずは、銀以外の元素を片っ端から試しました。釉薬に混ぜては焼き、可能性を探る、という工程を繰り返したのです。この時、別素材で上からコーティングするのではなく、釉薬に混ぜてつくることにこだわりました。陶器本体と一緒に焼き上げることで一体化し、長持ちする素材になるからです。
釉薬を吹き付ける「施釉(せゆう)」工程
その一方で、釉薬自体の成分に着目したアプローチも並行して進行していました。
釉薬には艶を出すガラス成分を中心に、粘り・硬さ・色を出すための様々な成分が含まれています。これらの成分バランスに目をつけたのです。配合を変えることで釉薬成分の「レシピ」をつくり、防汚性のテストを何度も繰り返しました。数十種類のレシピを試した結果、ついに汚れがつきにくい配合を発見。研究所と事業部の連携で製品化に向けた開発が本格的にスタートします。
釉薬の原料の一部
防汚性を高めるために次に注目したのが、汚れが付着する「とっかかり」をなくしてしまうこと。釉薬を細かく粉砕し、ツルツルな表面になるように試みますが、ヒビが入ったり、下地が見えたりなど、なかなか思うようにはいきません。
そこで試したのが、「二層がけ」。汚れのつきにくい釉薬の上に、ツルツルの表面をつくる高純度のガラス釉薬をかけるという従来の衛生陶器の常識を覆す手法で、セフィオンテクトの原型をつくりあげたのです。
「セフィオンテクト」の原料
ちなみに、このガラス層には、従来の釉薬に含まれる顔料「ジルコン」を含んでいません。ミクロレベルでザラつきがあり、長期間の使用で剥がれやすくなるジルコンを使用しないことも、ツルツルな表面を長期間キープするための秘訣でした。
また、この二層がけを一回焼きで生産できることもセフィオンテクトの真の凄さです。
通常、溶けて混ざり合う2つの釉薬を、TOTO独自の技術力で同じ窯で焼け分けることで、生産コストを大幅に下げることができました。
セフィオンテクトの高い防汚性を可能にしているのは、ツルツルな表面をつくる「平滑性」と水となじみやすい「親水性」です。
釉薬の二層がけに加え、ジルコンを含まないナノレベルの「平滑性」。そして、水なじみがよく、汚れを浮かしてくれる「親水性」。
ほぼ100%ガラス成分でつくることによる水なじみの良さが、汚れをよせつけず、落としやすいという高い防汚性を実現させています。
抗菌から始まり、超平滑・親水性にたどり着いたセフィオンテクト。便器の防汚性をいかにして高めるか、その性能をどれだけ長く保てるか。その目的の達成こそが重要です。1999年の誕生以来、今でもトイレの重要なポイントとして、第一線の技術をキープし続けています。
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