北九州市のTOTOミュージアムで初めて行われた講演会には、定員を大きく超える方に参加いただき始まりました。
「インサイド・アウト」とは「裏返し」という意味です。見方を変えると視点が変わり、視点を切り替えるスイッチを変えると、街の見え方も変わってくる。大きなスケールではなく小さなスケールから、逆のアプローチによる発想が基本のトラフ特有の考え方です。
まず、2016年にギャラリー・間で開催された展覧会の説明から始まりました。映像を見た後に、また展示を見直すとその思考が良くわかると仕掛けを紹介しました。
「港北の住宅」を例に、クリーム絞りを窓に見立て、どのような光が入るか、時間によってどのように変わっていくかを想像するという視点をもち、それを実現化する過程を説明しました。
この視点を変えるという考え方は、異なる分野においても建築的な思考を取り入れることで生かされています。例えば、使い込むごとに色が変化していくことを初めから考え、「時間の可視化」を意図した指輪のデザインや、「空気の可視化」を意図したトラフの代表作「空気の器」のプロダクトにもつながっています。
講演会終盤には、東日本大震災をきっかけに始まった石巻工房とのプロジェクトを紹介しました。働く場をつくるという、「小さな都市計画」の実践の試みを紹介して講演会を締めくくりました。
自分の視点を小さくして、その空間の中を歩き回り想像するというトラフ特有の発想の数々を知る、まさにトラフのアタマの中をのぞき、思考の過程を追体験できる講演会となりました。
講演会終了後には、ミュージアム特別展示室で開催中の「トラフ展 インサイド・アウト」で、講演会で紹介された映像や建築模型、プロダクトなどを楽しんでいただきました。(主催者記)