TOTO

トラフ展 インサイド・アウト

展覧会コンセプト
インサイド・アウト

ホテルの小さな客室の内装を手がけたことからトラフの活動が始まった。私たちの仕事は指輪などのプロダクトからインテリア、舞台美術、建築まで幅広い。どんなことであれ、目の前にあることに興味をもって積極的に取り組むことで、さまざまな領域を横断しながら活動してきた。

建築は、敷地とその環境など、与えられた条件を受けて初めて計画することができる。一方でプロダクトは、どこで誰に使われるのかも分からないことが多く、建築を学んできた私たちには戸惑いがあった。そこで、例えば小さなプロダクトであっても“敷地”を自ら設定することで、建築が周辺環境と密接に関係するように、そのスケールにとどまらない広がりを与えうることが分かってきた。私たちも参加している石巻工房のプロジェクトは、地域との小さな接点をつくるような家具のデザインを通じて、地元の雇用を生み、今では石巻における産業として定着しつつある。この試みを、家具から都市へと広がる提案のひとつの実践の場と捉え、継続して取り組んでいる。

「インサイド・アウト(Inside Out=裏返し)」というタイトルは、本展でトラフの頭の中をさらけ出すこと、そして、トラフがこれまで「都市>建築>インテリア>家具>モノ」といったヒエラルキーにとらわれないアプローチをしてきたことを表象している。これまで手掛けてきた作品から、現在進行中のプロジェクトまで、その過程で生み出された思考の断片をフラットに並べて、風景のようなものをつくり出す。トラフのクリエイションの現場に入り込むライブ感を体験してもらいたい。
鈴野浩一、禿 真哉
建築家プロフィール
トラフ建築設計事務所
鈴野浩一(すずの こういち)と禿真哉(かむろ しんや)により2004年に設立。建築の設計をはじめ、インテリア、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムービー制作への参加など多岐に渡り、建築的な思考をベースに取り組んでいる。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「NIKE 1LOVE」「港北の住宅」「空気の器」「ガリバーテーブル」「Big T」など。「光の織機(Canon Milano Salone 2011)」は、会期中の最も優れた展示としてエリータデザインアワード最優秀賞に選ばれた。2015年「空気の器」が、モントリオール美術館において、永久コレクションに認定。2011年「空気の器の本」、作品集『TORAFU ARCHITECTS 2004-2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス』 (ともに美術出版社)、2012年絵本『トラフの小さな都市計画』 (平凡社)、2016年『トラフ建築設計事務所 インサイド・アウト』(TOTO出版)を刊行。

©Yoshiaki Tsutsui
TOTO出版関連書籍
著者=トラフ建築設計事務所