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2016年 東京オリンピックで埋立地に設ける新競技場イメージ。 |
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海の森、ひいては世界の森に。世界的な著名人も賛同している。 |
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プンタ・デラ・ドガーナ工事風景。2009年6月のベニス・ビエンナーレに合わせてオープン予定。 |
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安藤忠雄、次期東京オリンピックと東京を語る
講演はまずオリンピックの話からはじまった——。
「1960年代の目標を持っていた時の日本は強かった。今の元気のない日本も、何か目標というものを持ったらいいのではないか。オリンピックを通じてもう一度、目標を持てるようになれるのではないかと思っています。」
「東京でのオリンピックは既存の施設を可能な限り使用することが大切で、資源やエネルギーの無駄遣いをしないよう工夫しなければならないと思います。新施設も私が設計するのではなく、世界コンペで世界中から優秀なアイディアを募集すればいい。」
「お台場の先のゴミの埋め立て地に1,000円募金を50万人から集めて“海の森”をつくりたいと考えています。これは明治神宮とほぼ同じ大きさで、元宇宙飛行士の毛利さんの話だと、宇宙からも点として認識できるギリギリの大きさです。これは東京だけの森じゃなく、世界の森であり、地球の森。応援団としてU2のボーカルBonoやモッタイナイで有名なマータイさん、フランスのシラク元大統領などにも協力してもらい募金を募っている。建築家はデザインのことしか考えていないが、地球のことも考えなくてはいけないのではないでしょうか」。
2分に一度、冗談を交え会場を笑いの渦に巻き込みながら、安藤節はとどまるところを知らない。最初、私の前に座っていたスーツ姿の男性2人組は誰かに言われ仕方なく参加したのか、講演開始早々、居眠りをしていた。だが周囲の笑いで目が覚めると一転、安藤さんの話を真剣に聞くようなっていった。
焼け野原から一体誰が日本の都市をつくったのか?
オリンピックに次いで、国内外の安藤作品の話になった。まずは今回の展覧会でも目玉の<住吉の長屋>のスライドから始まり、現在、海外28箇所で進行中のプロジェクトの中から、中東アブダビの海洋博物館、イタリア・ヴェネチアの税関跡地<プンタ・デラ・ドガーナ>の新美術館などが説明された。
次に突然、白黒の写真が映し出された。それは終戦直後の東京と大阪の中心地の空撮写真だったのだか、一面焼け野原で何ひとつなかった。次いで現在の東京、大阪の街の様子が映し出された。そこには私たちの知っている、今の街の姿があった。
「1945年は何にも無い、こういう状態でした。それが今、ハコは要らない、建築はいらないと言われていますが、建設業がここまでつくってきたというその努力は認めてもらわないと困ります」——。
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