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吊り構造の照明 V+V(1967)と
テーブル・エロス(1971) |
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オスロの学生が作ったポスター |
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グローバリゼーションの進んだ現代建築において、「地域に根ざしたものから決して離れてはいけない」と声を強めて言う。そして「自分の署名を残そうとは考えていない」とも。周囲の人々と協力しあい、必要とあらば周囲の人に手をさしのべる愛をもっていることが大切なことだと説いた。私たちは常に、現実から目をはなさず、オーセンティックな物を追い求めるべきであると。
いまは、テクノロジーが進歩し、細分化して多くの人々の協力なしにはものはつくれない時代になってきた。だからこそ、皆がこぞってマエストロを目指すのでなく、協力しあうことがもっとも尊ばれるべきことであることを強調する。素材のことは職人が詳しいし、構造のことはエンジニアに相談する。それでも、彼らだって、人間だから間違いを起こすことだってある。だから、私たち建築家はアイデアを出すのだと、実に前向きな意見が飛び出した。ガラスの吊り構造の照明「V+V」のフォルムには、ムラーノ島のガラス職人も音を上げたそうだ。「ガラスにこんなこと、できっこない」。でもマンジャロッティ氏はあきらめずに職人たちと協働を続ける。そして、ようやくこの傑作が生み出された。ガラスの特性をギリギリまで引き出したシャンデリアは、今見ても美しい。
そして最後に彼は、3枚のスライドを映し出した。「私たちのことは他人に決めさせません」(イタリア語と日本語を1枚ずつ)。戦争を乗り越えた人の言葉かと思ったら、街角に若者が落書きをしたものらしい。強い意志を暗示させるが、個人ではなく共に考えていくことを示唆しているように思えてくる。そしてもう1枚は、オスロの学生たちが自分の展覧会のために作成してくれたというポスター。氏のあみだしたジョイントシステムと、その中心にはバリで氏が撮ったという子供がさらに小さな子供を抱きかかえているヒューマニックな構図の一点である。モノとモノとのジョイント部分に心を割いてデザインするマンジャロティ氏は、人と人の愛情をつなぐきっかけにも心を割いていることを象徴しているようだ。40年間にも渡り、日本人を受け入れてきたマンジャロッティ氏は、「もっとも日本的なイタリア人建築家」を自負している。質問タイムに入った時、行儀よくしている私たちに「コラッジョ!(勇気をだして!)」とけしかけるところは、イタリア人そのものだったけれど。 |
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撮影=Foto Casali(バランザーテの教会のみ)
ギャラリー・間(その他) |
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