撮影/新建築社写真部(特記・ポートレートを除く)
大阪の新たなランドマークとなる「中之島フェスティバルシティ」。東西の2棟の高層ツインタワーで、西側の「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」には西日本初進出の「コンラッド大阪」が最上部に入り、天空のホテルが実現しました。
土佐堀通から見る「中之島フェスティバルシティ」の高さ約200mの高層ツインタワー。右が「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」、左が「中之島フェスティバルタワー」。角のとれた形状が特徴。
(撮影:東出写真事務所)
大阪の新たな賑わいの拠点へ
4月17日、大阪市北区の中之島地区で「フェスティバルシティ」が街開きされた。「フェスティバルシティ」は、2012年11月開業の「中之島フェスティバルタワー」と、今年3月末に竣工した「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」の高層ツインタワーからなる。1879年に大阪・土佐堀で創業した朝日新聞社は、中之島へ移転し、以来130年にわたり中之島で新聞の発行を続けてきた。そんな朝日新聞社にとって歴史が深く、思い入れの強いこの地における「フェスティバルシティ」に込めた想いについて朝日新聞社大阪中之島プロジェクト室室長補佐の田中悦二氏に伺った。「この場所にはもともと四つ橋筋を挟んで東側と西側に3棟のビルがありました。それを2棟の超高層ツインタワーに建て替える計画です。2棟合わせて延床面積が約30万㎡という大型開発で、私たちは『新しい街』をつくろうという意気込みで取り組んできました。テナントオフィスだけでなく、この中之島エリアで働く人たちの利便性が高まるような工夫や、最近ではマンションも増えてきていますので、近くにお住まいの方が楽しめる仕掛けをきちんと盛り込みたいと考え、この2棟にはさまざまな機能を加えています。これから、中之島のみならず大阪にとって新たな賑わいの拠点となるよう、成長していければと思っています」。
この「フェスティバルシティ」には、2棟合わせて中之島地区で最大の49店舗の商業施設が入り、さらに「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」には大規模なテナントオフィスと、上層階にはラグジュアリーホテル「コンラッド大阪」が入る。「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」の設計コンセプトについて、日建設計設計部門設計部の小畑香氏に伺った。「これまで低層建物があったこの場所に新たなランドマークとして高さ200mの2棟のビルが建ちます。そこで、『大阪朝日ビル』(1931年竣工)や『朝日新聞ビル』(1968年竣工)といった既存建物が持っていた、角が取れたアールの建物形状を踏襲し、低層部には手積みのレンガの壁を設けるなど、新たなランドマークでありながらあたたかみを持って街に溶け込み、愛されるような建物となるように心がけました」。
利用客の声を生かし、こまやかな配慮を
「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」と、先行して開業している東側の「中之島フェスティバルタワー」の設計について次のように小畑氏は話す。「機能やファサードなど、さまざまな面で東側の『中之島フェスティバルタワー』での経験やノウハウを西側の『中之島フェスティバルタワー・ウエスト』に活かしています。たとえば、オフィスの共用トイレは、センターコアの一部に配置しているのですが、東側のビルを使われるお客様からの声を生かし、ブースや通路の細かな寸法を調整し、西側オフィスの共用トイレに採用しています」。また、建物の管理を行う朝日ビルディングPM事業部建設監理セクションマネージャー田能村明氏にトイレの利用客の声について伺った。「予想以上にトイレについてのご意見は多いです。そういった利用者のご意見をわれわれがお聞きして、よりニーズに沿ったものを『中之島フェスティバルタワー・ウエスト』で日建設計さんに実現していただきました。また、今回採用しているトイレなどの機器もメンテナンス性がよい汚れにくい製品を選んでいただいて、きれいが長持ちするので、非常に助かっています。西側のオフィスの入居はまだまだこれから増えていくところなので、どんな反響があるか楽しみです」。
自然を身近に感じられる天空のホテル
「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」の33〜40階に入る「コンラッド大阪」は、西日本初進出となる。テーマは「Your Address in the Sky −雲をつきぬけて−」。コンラッド大阪総支配人のカラン・シン氏に、大阪・中之島での開業について伺った。「中之島は、梅田と難波の中間地点にあり、ビジネスエリアだがレジャー施設や美術館、フェスティバルホールがあり、また川沿いで素晴らしい景色にも恵まれ、さまざまな顔を持つという地の利のある場所だと思っています。われわれコンラッドには『Never Just Stay. Stay Inspired.』というコンセプトがあるのですが、これはホテルを単に宿泊施設と考えるのではなく、人やその街の文化と触れ合うことでさらなるプラスアルファの経験をしていただくというものです。まさに中之島というエリアでそれが実現できると思いますし、われわれのコンセプトにマッチしています」。
「コンラッド大阪」の設計は橋本夕紀夫氏と日建スペースデザインが手がけている。日建スペースデザインチーフディレクターの戸井賢一郎氏に内装デザインについて伺った。「ビルの最上部に入るので、景色をどのように見せるかということをまず意識しました。フロントのあるレセプション機能が最上階の40階で、エレベーターを降りると下側に3層分の吹き抜けがあり、周囲の建物、中之島を囲む2本の川、大阪湾といった街の様子が飛び込んできます。また、上層部にあるため、太陽の光や雨や風といったさまざまな自然現象をより身近に感じることができるので、その自然現象をテーマとしてアートなどを各所に散りばめています。レセプション前に設置された名和晃平さんの『Fu/Rai』もそのひとつです」。
客室数は164室で、それぞれ広さは50㎡以上で、また天井高も最大3.1mと豊かな空間となっている。また、ベッドルームと水まわりの位置関係が特徴的であると戸井氏は話す。「通常水まわりは壁で囲むクローズドな空間ですが、今回は洗面所に面するL型の引戸を開閉できるようにし、開放するとベッドルームからユニットバスの奥にかけて一体で見えるシームレスな空間が実現しました。ほとんどの客室のユニットバスには、大きな正円のバスタブを採用していて、浴槽内部の半身浴用の段差の位置も、窓を向くように配置しています。この客室とつながる広いバスルームは、宿泊の中で記憶に残る体験のひとつだと思っています」。
「中之島フェスティバル タワー・ウエスト」のオフィス基準階トイレ 平面図
「中之島フェスティバル タワー・ウエスト」のエグゼクティブルーム 平面図
所在地 | 大阪市北区中之島3丁目2番4号 |
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主要用途 | 事務所・ホテル・商業・美術館 |
事業主 | 朝日新聞社・竹中工務店 |
設計 | 日建設計 |
ホテル内装設計 | 橋本夕紀夫+日建スペースデザイン |
構造設計 | 日建設計・竹中工務店(設計協力) |
施工 | 竹中工務店 |
敷地面積 | 8,377.84㎡ |
建物面積 | 6,106.48㎡ |
延床面積 | 151,146.45㎡ |
階数 | 地上41階/地下4階/塔屋2階 |
構造 | S造一部SRC造RC造 |
駐車場 | 平面式、一部機械式 239台(+敷地外26台) 計265台 |
竣工 | 2017年3月 |
〈コンラッド大阪・エグゼクティブルーム〉 | |
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ユニットバスルーム | 特注品 |
浴槽 | PVY140AS |
バス水栓 | TBXS20 |
シャワーヘッド | THC52 |
オーバーヘッドシャワー | TBXS18B |
トイレ | CES9564W |
〈オフィス標準階トイレ〉 | |
小便器 | UU500 |
洗面器 | L548U |
水栓 | TENA41A |
ハンドドライヤー | TYC420W |
朝日新聞社
大阪中之島プロジェクト室
室長補佐
コンラッド大阪
総支配人
日建設計
設計部門 設計部
日建スペースデザイン
チーフディレクター
朝日ビルディング
PM事業部
建設監理セクション
マネージャー