NEW PRODUCT STORY

新商品開発ストーリー
「次世代のトイレ」を実現する
デザインとテクノロジー

TOTOを代表する、これからの「次世代のトイレ」。
それは、日本だけでなく海外でも選ばれる、隅々までこだわり抜いた、最高峰の陶器を生かしたトイレ「NEOREST NX」です。
美しいデザインを、確かな機能と両立させるため、余すことなく注ぎ込まれたTOTOのこだわりをご紹介します。

  • 隙間のないノイズレスデザイン。陶器の本来持つ曲線を活かした360度どこから見ても美しいフォルムを実現。

  • 便ふたは便器後方のセンターヒンジで開閉し、便ふた・便座を開けた状態でもきれいに見える。

  • 便ふたは便器後方のセンターヒンジで開閉し、便ふた・便座を開けた状態でもきれいに見える。

海外市場を見据え
「次世代のトイレ」をつくる

NEOREST NX」の開発に携わった、衛陶開発第一部の山川聡士さんと、ウォシュレット開発第二部の庭野祥子さんにお話を伺います。まず、「NEOREST NX」の開発の経緯についてお話しいただけますか。

山川聡士(以下、山川)NEORESTはTOTOを代表する商品です。今年で創業100周年を迎えるTOTOにとって、その次の100年を見据えてNEORESTをベースとしたアピールを、日本だけでなく海外でも展開したいという考えがありました。これまでNEORESTは日本市場をターゲットとしてきたので、その延長線上での進化だけでは世界で受け入れられませんから、まったく新しい次世代モデルのトイレの開発が必要となりました。そこで、一度何もない原点に立ち戻り、これからの時代にふさわしい「次世代のトイレ」を考えるところからスタートしました。

庭野祥子(以下、庭野)衛陶開発とウォシュレット開発のほかデザイン、企画、研究所からメンバーが集結して、私たちの考える「次世代のトイレ」について、ひたすらディスカッションを行いました。その中で、「フラッグシップモデル」をつくる、というキーワードが出てきました。「フラッグシップモデル」とは、単純にシリーズの中で最高級な製品という意味だけでなく、企業がこだわってつくるもの、その企業の思想を表現するもの、という意味も含みます。そこで、これから世界と戦っていくためには、TOTOがこれまでずっとこだわってきた「陶器」を生かしたトイレをつくろうという方向性が決まりました。
そこから、TOTOを象徴する最高峰の「陶器を生かしたトイレ」を実現するために、必要な要素や形、機能、技術は何かという検討を、合宿のようにみんなで膝を突き合わせながら、ひたすら長い時間をかけて開発を行ってきました。

NEOREST NX」のターゲットはどのあたりを想定されていますか?

庭野ターゲットは限定していませんが、家を建てたり、リノベーションをしたりする中で、家具や設備機器、建具までご自分で厳選して使われるような方からも選ばれる商品としたいと考えています。

山川世界的な水まわりのデザインのトレンドは欧州がリードしていて、優れたデザインが豊富にある海外でも、その中で選んでいただける商品を、と考えていました。

ノイズレスデザインを実現する
高い技術力と培ってきたノウハウ

NEOREST NX」の優れたデザインを実現するための、開発のポイントについて教えてください。

庭野NEOREST NX」のデザインの最大の特徴は、便器とウォシュレットの一体感です。ウォシュレット一体形便器は、便器である陶器と、その上のウォシュレットである樹脂という異なる素材で構成されていますが、今回の「NEOREST NX」ではその異素材感を限りなくなくし、全体として一体感のあるフォルムを実現しています。

山川この一体感を実現するためには、非常に精度の高い製陶技術が必要でした。陶器は焼き物ですから、大きくなったり小さくなったりと多少ばらつきが出てきてしまいます。全体形状には柔らかな曲面が用いられ、ウォシュレットとの合わせの部分も平面ではなく曲面になっているため過去に類のない高い精度が求められましたが、長年培ってきた高度な技術とノウハウを駆使し、妥協せず何度も試作を重ねて狙いのフォルムを実現しています。
また、この精度を量産できる品質でつくるというのも非常に難しいポイントでした。私たちは一品モノの美術品をつくろうとしているわけではありません。あくまで量産品として、この「NEOREST NX」をつくることで、その高い品質が他の量産品にもエッセンスとして展開されていくことを意識しています。

製陶技術以外にも、その高い精度を維持していくために必要な技術はありますか?

山川精度のよいものを量産するために、狙った通りのものがつくれているかどうか、寸法や形状のばらつきがどの程度発生するのか、出来映えをチェックすることが大切になってきます。「NEOREST NX」は表面も内側も、非常に複雑な三次元曲面で構成されていますので、CTスキャンや三次元測定器を用いてでき上がった便器についてひとつひとつ寸法や形状を正確に測定しました。便器をつくる型や設備についても同様です。狙い通りのものを製造できなければ成立しない製品なので、こういった生産技術がなければ高い品質を保って量産するのは難しかったと思います。

庭野従来のウォシュレット一体形便器は、便器とウォシュレットをそれぞれ別々の工場で製造し、施工現場へ搬入してその場でウォシュレットを載せて完成としていたのですが、今回の「NEOREST NX」では、これまでにないくらい寸法を攻めた設計となっているので、工場内で便器とウォシュレットをきっちりとズレなく取り付けて完成品としてから、現場へ搬入することとしています。これはこの商品ではじめての試みです。

  • ウォシュレットの機能部品を便器内部に納めるため、便器は複雑な形状で非常に高い精度の製陶技術が必要とされた。

  • ウォシュレットの機能部品を便器内部に納めるため、便器は複雑な形状で非常に高い精度の製陶技術が必要とされた。

デザインと機能の融合

NEOREST NX」では、優れたデザインだけでなく、その中には充実した機能も融合されています。デザイン性と機能面を両立させる上で苦労されたポイントはありますか?


庭野NEOREST NX」では「陶器の美しさが際立つトイレ」をつくるため、あまりウォシュレットを主張させたくなかったので、便器部分の内部にウォシュレットの機能部品を納めています。ウォシュレットには、ノズルなどの水路系、風系、コントローラなどさまざまな機能部品があるのですが、ウォシュレットの進化に伴い、機能部品が小型化してきています。それにより、デザインの自由度が上がり、今回も便器内部に収納することができています。
さらに、余計なノイズをなくすため、便ふたも便座も、後方のセンターヒンジで開閉するようなデザインとなっていますが、この部分へ収納できて、かつこの大きな便ふた・便座を電動で開閉できるヒンジ構造を設けています。また、人を検知するセンサーなども従来は透過窓を設けていましたが今回はすべて樹脂を透過するセンサーを採用して隙間をなくすなど、美しいデザインと機能の両立のため、さまざまな手を尽くしました。機能を感じさせないすっきりとしたデザインが実現できています。

山川今回、普段は機能面を重視することが多い便器の内部も見た目の美しさにこだわりました。究極のボウル形状というのは凹凸が何もないお椀のようなものだと考え、ボウルに影がでないよう便器のふちをなくし、少ない水を有効に使ってトイレを洗浄するトルネード洗浄を採用しました。吐水口の周りは、水の流れをコントロールするためにどうしても凹凸を付ける必要があったので、比較的汚れにくい便器のサイドに設けることとし、さらに吐水口を後ろ向きとして前から見た時に目立たないようにしました。これにより、凹凸の少ないつるっとした美しいボウルが実現し、同時に、汚物の付きやすい便器の前方や後方部分も形状がシンプルなため、汚れているのがわかりやすく、汚れても掃除しやすくなっています。

  • 便器にはふちなしトルネード洗浄を採用。凹凸のない美しいボウル形状で掃除が簡単に行える。

  • 便器にはふちなしトルネード洗浄を採用。凹凸のない美しいボウル形状で掃除が簡単に行える。

陶器の質感にもこだわる

NEOREST NX」は、開発当初からグローバル展開を意識されているということでしたが、海外市場にも通用する美しいデザイン以外で具体的に製品に取り入れられたポイントはありますか?

庭野海外ではウォシュレットは日本ほど普及しておらず、また、バスルーム・レストルームに電化製品のようなものを置くということをあまりしません。また、インテリアの一部のような、陶器に近い硬質な樹脂が選ばれる傾向があります。私たちが通常使用している樹脂は、清掃性などを考慮して選ばれているものなので、今回、材料を変えることなく陶器に近い質感を出すにはどうすればよいかと考えました。陶器の表面には釉薬というガラス層が塗布されていて、よく見ると角度によって少しゆらぎを感じます。その質感を再現するため、まず樹脂にパール塗装をし、その上から、敢えてそのパールが消えるような白の塗装を重ね、レストルームの少し光量の少ない照明の下では、ところどころパールが見え、奥行きや深みを感じることのできるようなゆらぎを表現しました。

  • 陶器に近い質感を再現するため、まず樹脂にパール塗装。その上から、敢えてそのパールが消えるような白の塗装を重ねて陶器の釉薬のようなゆらぎを表現した。

お気に入りとして選ばれる商品へ

最後に、開発者として、これから「NEOREST NX」をどのように使っていただきたいと思われていますか?

山川私は今回、単純に「トイレ」を開発したとは思っていなくて、お気に入りの車や時計と同じように、その人の特別であり、好きになって選んでいただく商品を開発したという想いが強くあります。「NEOREST NX」が、選んでいただいた方の生活の一部となり、レストルームに入るたびにわくわくしたり、嬉しくなるような、そんな存在になれるとよいと思います。

庭野私も、「NEOREST NX」はこだわって選んでいただく商品だと考えているので、極端にいってしまえば、新しく家を建てる時にレストルームが中心となって、家の間取りが決まるくらいの存在になってほしいと思います。「NEOREST NX」を選んでいただくことによって、今までのレストルームと違うひとつの居住空間となり、そこでの過ごし方も変わるかもしれませんね。

チームと協働して導き出した新しい未来のトイレデザイン
吉岡佑二 (デザイン本部 デザイン第一部)

TOTOの象徴となる「未来のトイレ」は何かと考えた時、トイレ単体として魅力的なものであるべきだと考えました。また、TOTOは今年100周年を迎えますが、単なる記念モデルではなく、次の100年にもずっと続いていくような原型となるトイレを新しくつくり直そうという想いもありました。
開発チームの「陶器を生かしたトイレ」というキーワードを基に、本当の一体形を目指し、陶器が本来持つやわらかな曲線の美しいフォルムを提案しました。このデザイン案をベースとして、開発や企画のメンバーから、機能面や製造面などさまざまな視点で意見を出し合い、より説得力のあるデザインへと昇華していきました。たとえば、便器の前から後ろへのせり上がった形状は、排便時の姿勢と便座の関係を分析した細かなデータの蓄積から生まれました。
デザイン性が高くても、機能を削ることで成立しているものは数多くありますが、TOTOが提供する製品はデザイン性と機能性の両立を目指しています。「NEOREST NX」は、TOTOのすべてのノウハウを結集させてつくり上げた、デザインと機能の融合が実現した最高峰のトイレなのです。

Profile
  • 庭野 祥子

    Sachiko Niwano

    にわの・さちこ
    TOTO株式会社/ウォシュレット生産本部/ウォシュレット開発第二部/商品開発第一グループ
    1973年広島県生まれ。山口県育ち。96年奈良女子大学卒業。TOTOウォシュレットテクノ㈱入社以来現在まで15年間、ネオレストを中心としたウォシュレット一体形便器の開発に従事。

  • 山川 聡士

    Satoshi Yamakawa

    やまかわ・さとし
    TOTO株式会社/衛陶生産本部/衛陶開発第一部/衛陶開発第二グループ
    1972年岡山県生まれ。95年早稲田大学卒業。1995年にTOTOに入社以来14年間、パブリック商品の開発を担当。2010年よりTOTO中国へ異動。衛陶開発センターの立ち上げに従事。2013年に衛陶開発に復帰し、現職に至る。

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