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妹島和世+西沢立衛/SANAA講演会 「環境と建築」

妹島和世+西沢立衛/SANAA講演会 「環境と建築」
日時
2021年12月10日(金)18:00開演、20:00終演(予定)
会場
有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1有楽町マリオン 11F)
定員
343名/参加無料
妹島和世+西沢立衛/SANAA展 「環境と建築」講演会レポート

 SANAA講演会は、展覧会とともに2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時期に予定されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、約1年半遅れで開催されました。本講演会は、妹島和世氏と西沢立衛氏にとっても久しぶりの対面での実施となり、感染症対策に配慮して定員を半数に絞った会場は満席となりました。

 「妹島和世+西沢立衛/SANAA展 環境と建築」では、SANAAと妹島事務所、西沢事務所の合同展として、日本、中国、ヨーロッパなど各地で取り組んでいる最新プロジェクトが中心になっています。講演会もこれと連動し、会場で展示されているプロジェクトの最新情報を紹介いただく形で進められました。

 「環境と建築」は、妹島氏と西沢氏が長年大切にしてきたテーマです。SANAAが目指す「環境」とは、その場所がもつ気候や歴史、人びとの行為なども多様な要素を含めており、建築が人と環境を隔てる境界となるのではなく、むしろ建築が風景に溶け込み全体として環境をつくっていくよう、常に考えて計画されていると言います。
 例えば、「新香川県立体育館」は、瀬戸内海に浮かぶ小島のような屋根をかけた形状をもち、前面道路から広場、親水公園、港そして瀬戸内海までに至る人の流れが、分断されることなく連続してやわらかくつながり、背後に見える讃岐山脈と一体となって香川の新しい風景となるよう計画されています。そのほかのプロジェクトも、彼らが地勢をどのように読み解き、いかにして地形に沿うよう建築を計画していったのか。着想から具体的な機能や使われ方を、国や地域における特徴にも触れていただきながら、アイディアの源泉を約1時間半たっぷりと講演いただきました。

 講演会が開催された12月10日は、ちょうどTOTO出版からSANAAの作品集が発行された日でした。妹島氏、西沢氏は作品集も建築のひとつととらえ、3事務所合同の作品集をつくりたいと長年企画を温めてこられました。版型からページ構成やブックデザインまで、その試行錯誤を重ねた検討段階の大量のモックアップの写真など、貴重なスライドも披露いただき、講演は締めくくられました。

 講演後に西沢氏がつぶやいた、「こうして講演者と聴きに来てくださった方々が同じ時間と空気を共有し、ともに建築を考えることが改めて大切だと感じた」という言葉は、常に人びとが集い、ともに過ごす場の在り方を考え続けているSANAAの建築思想を端的に表しているようでした。(主催者記) 
 

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著者=妹島和世、西沢立衛