3F、4Fの2層に分かれた展示室の下階では、作品ごとに環境と建築が融合した状態のヴァリエーションが示されている。各作品に付されたキャプションを読んでも、それぞれに「風景をつくる」「地形に合わせる」「自然と触れ合う」「建物と庭が一体となる」などといった言葉が目に付く。ただし、こうした言い回しはSANAAだけのものでなく、昨今の建築家たちなら、誰でも口にしそうなものだ。何を今さら、との印象も抱く。では何が他の建築家と違うのか。それは環境と建築の融合を、抽象的なお題目としてではなく、文字通りのものとして実現しようとしている点だ。上階では、環境との融合を成立させるため、建築にどのような構造やディテールを備えさせればよいのか、その具体化への道筋を見せる模型を並べている。公園の一部となるような開かれた劇場をつくるために大屋根のレイヤーとディテールのスタディを重ねた蘇州獅子山広場芸術劇場や、小さなピースを無数につなぎ合わせて地形のような巨大架構を形づくったPuyuan Design and Event Centerの展示が、その好例だ。環境と建築は本当につながる。その信じる力こそが、SANAAの特質と言えるだろう。