展覧会コンセプト文
展覧会という表現手段でしか見せられない建築の展示コンテンツとは何か?雑誌や本などの印刷媒体や、現物の建物を実際に見ても伝えられない情報を見せられないと、展覧会を企画する意味がありません。もちろん完成模型は展覧会でしか見せられませんが、模型よりは実際に建った建築を見た方が比べものにならないほど意味があります。然るに設計プロセスは印刷媒体で見せることができますが、施工プロセスは建物完成後には理解できない、展覧会ならではの表現となるでしょう。
最初のスペースでは、2017年春にオープンする、パリ近郊に建設されている音楽ホール・コンプレックス「ラ・セーヌ・ミュジカル(La Seine Musicale)」の完成までのプロセスを展示します。このプロジェクトはパリ市西隣のブローニュ・ビヤンクール市を流れるセーヌ川の中州セガン島の西先端に位置します。この島は、1992年にルノー自動車の工場が立ち退いた後、長く放置されていたところに、1999年にピノー財団が美術館を計画したものの中止となり、その後ジャン・ヌーベル氏が、島全体のマスタープランをつくり、元のピノー財団の敷地にはPFI方式で音楽ホール・コンプレックスのコンペが行われました。1年半に及ぶコンペ期間を経て、2013年4月我々が優勝しました。本展では、コンペから完成までの6年間にわたる設計、建設プロセスをモックアップや映像を使って表現します。
他の空間では、現在進行中の「スイス時計会社本社」、「台南市美術館」「富士山世界遺産センター」、「竹田市クアハウス」、「由布市ツーリストインフォメーションセンター」、「ティームセブン新社屋」さらに慶応義塾大学SFCの学生により建設されるペーパーハニカム・パネルでつくられたドームや、災害支援プロジェクトの熊本木造仮設住宅、ネパール復興プロジェクトなどの木・紙構造のモックアップを展示し、設計・開発・建設のプロセスを展開します。
坂 茂