デビュー作であるトロンハイム学生組合会館の入口ホール「ルントホール」(2007年)の完成後、酔っ払い学生たちに心地よい場所をつくっただけだという虚しさにとらわれた彼らはわざわざ不便な船上生活をはじめ、やがて「必要によって突き動かされる建築」を求めてタイの奥地へ旅立つ。その後世界各地で実践を重ねる中でいくつかの流儀が生み出される。現地の人たちとのディスコミュニケーションが生む予期せぬ間違いに価値を見いだす「美しい誤謬(beautiful mistakes)」、地元の人が関わり、現地の材料や技術を使うことで「物理的構造物以上の何かを残す(Leave more behind than the physical structure!)」、そして、「建築は多くの選択の総体である(the sum of a thousand choices)」という言葉は、現場におけるプロセス、メソッド、取り組みそのものが建築であると言う彼らの建築観をよく示している。「カッシア・コープ・トレーニングセンター」(2011年)ができて半年ほど経ち、隣町にTYINのディテールそっくりの屋根をもつ建物が建ったことを報告するアンドレアはどこか誇らしげだ。それこそが彼らが「物理的構造物以上の何か」を残した証左であるからだ。