状態の構築

僕は、星ひとつない、真っ暗な宇宙空間に自ら身を置き、設計活動を始めたような感覚を持っていた。それは専門学校で建築を２年間学び、普通の設計事務所で実務を５年間学んではいたものの、建築の思想や論理といったような事柄に、しっかりと、または真剣に向かい合ったことが無かったから。それは暗い宇宙空間で何処へ向かい、または進むべきか、星となる「定点」が無い状態だったともいえる。そんな中で、自らの設計活動を始めた。

あたり前だが、建築物は土地に定着している。そして、その場の全ての「状態」を等価に扱いながら設計していく。僕も、この基本的な方法により、10年間、建築を作り続けてきた。それは「定点」を探す作業であったといえる。北海道であるが故に、否応なしに応答し、または応答せざるをえなかった「状態」により生まれた「定点」や、一般的な方法を使いつつ、僕なりの手段を思考する中で生まれた「定点」など、必然性における「状態の構築」を繰り返してきた。そして今でも、経験や反復、時には変化する思考を続けている。

この様に「定点」の発見や気付き、反復や変化を、時系列という方法により、少しでも感じ取って頂ければ良いし、今後もこの基本的な方法は、変わらないと思うが、少しずつ変化していくであろう未来も、想像してみて欲しいと思う。