Kazuhiro Kojima + Kazuko Akamatsu / CAt Cultivate
2007 9.14-2007 11.17
English
2003年5月、村山。日産の工場が閉鎖されたことはニュースで聞き知ってはいたが、原っぱに戻った工場跡地のフラットな広大さに驚かされる。南北2kmのテストコースは、舗装は取り払われていたが、バンクの地形が残っていた。この場所に、2036年を当面の一区切りの目標として「全ての人々がやすらぎ、祈りをささげたくなるような場所」を創るのだという。30年以上の時間に茫然とする。(*1)

2004年4月、中央アジアを初めて訪れた。3敷地を廻るだけで1週間以上かかる。クライアントや各ジャンルの専門家とディスカッションしながらの移動。シルクロードの素晴らしい風景との出会い。(*2)

2005年8月、ホーチミンシティ。国際コンペへの招待であった。郊外のメコンデルタの縁は、いまだ都市化されていない場所であり、敷地へは船でしかたどり着けない。川岸にはマングローブが密生する。暑いことは暑いが、風が気持ちいい。今までの経験の中でも、最高に気に入った幸せな敷地である。(*3)

展覧会では、たまたま巡り会った、文化も気候も異なる場所で進行中の3つのプロジェクトを取り上げる。3プロジェクトの共通点は「膨大な敷地」である。どのプロジェクトも、設計の途上である。最終案ではない。展示されるのは、私たちの<思考>を敷地においてその都度〈かたち〉にしたものとなる。プロジェクトに関わって移動を繰り返しながら考え続けて、わかってきたのは、どうやら「耕し続けているのだ」ということである。



Photo Gallery
(*1)プロジェクトMURAYAMA
30年をひと区切りとして、広大なランドスケープの中に徐々に建築を立ち上げていく、日産自動車武蔵村山工場跡地での壮大な計画。(敷地面積1,060,000m2
プロジェクトMURAYAMA
(*2)中央アジア大学 ナリンキャンパス
中央アジアに位置するキルギス共和国のナリン、タジキスタンのコログ、カザフスタンのテケリの各敷地に3キャンパスが同時に建設され、ひとつの新設大学となる「中央アジア大学」。このうち「ナリンキャンパス」(敷地面積2,780,000m2)の全体計画をCAtが担当する。
中央アジア大学ナリンキャンパス
(*3)ホーチミンシティ建築大学
ホーチミン市街地中心部にある建築専門大学の新キャンパスを、マングローブが群生するメコンデルタ地帯に計画する。(敷地面積370,000m2

ホーチミンシティ建築大学

図版提供=CAt

CAtは、内にも外にも壁がない開かれた学校のあり方を提示した「千葉市立打瀬小学校」(第1期 1995年/第2期 2005年)で、以降の学校建築に大きな影響を与え続けており、これを契機に「宮城県迫桜高校」(2001年)、「リベラル・アーツ&サイエンス・カレッジ」(2004年/カタール・ドーハ市)、「ぐんま国際アカデミー」(2005年)、その他多くの教育施設を手掛けていることで知られています。また、空間設計の手法として「アクティビティ」、「スペースブロック」、「黒と白」といった独自の考え方を提言し、最近ではそれらをさらに、風や光や時間、そして同時にそこで起こる人びとのアクティビティといった「流れるもの」を手がかりに空間を設計しようという「Fluid Direction」という考え方に発展させています。

展覧会では、このようなCAtの活動を現在進行中の3つのプロジェクトを通して紹介します。
3プロジェクトに共通する、広大な敷地を元の状態から別のものに変換させていくということ、そしてさまざまなコラボレーションとともに、長いタイムスパンでプロジェクトを進めていくということ、このような通常の建築のスケールでは測ることのできない、まさに地球を耕す(=cultivate)設計行為をドキュメントします。
Back to Top
GALLERY・MA TOTO出版 COM-ET TOTO
COPYRIGHT (C) 2008 TOTO LTD. ALL RIGHTS RESERVED.