インタビュー

構法から考えるか
空間から考えるか

——設計プロセスのなかで、構法の発想がいつ頃から出てくるのかをうかがいます。たとえば、ある特殊な構法があり、それが効果的なので、その構法を使ってみようというところから、建築の設計がスタートする場合があります。一方で、先に空間や意匠をイメージし、それを具象化するための知恵として、特殊な構法を開発していく、という手順もあります。

真宏 僕たちは、その中間くらいのスタンスです。
麻魚 構法は、空間をイメージするときの源泉にもなっています。空間と構法とは、同時に頭に浮かんでくるものなので、それが私たちの建築の特徴だと思います。どちらか一方ではなくて、同時に考えるほうが、私たちにとっては健全です。ミース・ファン・デル・ローエの建築は、空間の印象が強いのですが、ディテールや素材の使い方もすばらしいですよね。ミースも、空間と構法を同時に考えていたのだと思います。

——ヨーロッパのモダニズムの思考は、構法的なところが抜け落ちて日本に輸入された印象もありますね。

真宏 質がろ過されて、概念だけが日本に届いた感じがします。その概念にはあまり振りまわされたくない。構築体と構成体が、関係をもたずにパラレルに存在している状態ではなく、一体的に考えるべきだと思います。

——しかし、空間と構法を同時に考えるためには、材料や生産システムの知識や情報が必要だと思います。日々、リサーチをしているのでしょうか。

真宏 現場で情報を得ることが多いですね。たとえば、「鉄のログハウス」で大断面のH形鋼を用いたのは、規模の大きな別の建物の現場で、H形鋼を近くで見た経験が影響しています。そこで材料の具合が頭に入りましたから、住宅に持ち込むことをイメージすることができました。また「雨晴れの住処」(2008)の段々状の型枠も、別の現場で型枠大工と話をしていたときに、セパレータを型枠の真ん中に取り付けられることを知りましたので、型枠を斜めに傾けて下見板風にすることができる、という発想に至りました。

——特殊なことばかりやっていると、施工者にいやがられませんか(笑)。

真宏 いや、むしろ巻き込んで、一緒になってやっています(笑)。構法的なアプローチをする建築家のメリットだと思いますが、技術者が完全に自分の仕事として取り組んでくれるのです。しかも、その技術者たちの技が、そのままデザインになる。そのため、技術者は非常に協力的です。わからないことがあっても、質問できる職人が僕らのまわりにはたくさんいるのです。
麻魚 ガラスなら誰に聞く、鉄なら誰に施工してもらう、集成材なら誰で、金物ならこの人、というように、それぞれ信頼している職人がいます。また、工場見学にもよく行くので、それが私たちのストックになっていると思います。誰かを介する前の生の情報は大切で、自分のなかで応用の利く知識になります。そのために工場に行って、実際にいろいろと触ってみるようにしています。

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