インタビュー

新しい構法の効率と非効率

——特殊なことをすると、一般的な構法よりも高くなりそうにも思えますが、コストについてはいかがですか。

真宏 僕たちは、コストはよく考えて設計をしています。見積りが予算から大きくはずれてしまうことは、ほとんどないですね。僕らが理想としている、健全な材料や構築体は、新しくても、モノとして合理的です。そのため、お金も納まりやすく、予想もしやすいのです。たとえば、木を使うにしても、工場での加工のことを想定して、手間やコストを踏まえたうえで、デザインを進めています。
麻魚 そう、私たちの建築のコストは適正だと思いますよ。つくることを想像して、無理をしていませんから。できたものは変わっているように見えるかもしれませんが、自然につくっているつもりなのです。
真宏 たとえば、「目黒の住処」(07)という住宅の外壁は、独自の模様のパンチングメタルにしました。特殊なものなので、コストが高いように思う人もいるかもしれません。ただ、パンチングメタルは孔のパターンを、通常でもデジタルデータで入稿しているのです。そのため、オリジナルのパターンにしても、手間もコストも変わりません。

——工事に無駄な労力がかからない構法だということはわかりますが、新しい構法ですから、先例がなく、設計には手間がかかるのではないですか。

真宏 そうですね。既存の構法に頼らずに新しいことをしようとすると、設計や構想には時間がかかります。施主や敷地によって、僕らがいう健全な構築の仕方は変わっていくものです。それを毎回探すわけですから、効率的ではないかもしれません。合理主義者は面倒くさがりだと思いますから、後で楽をするために、最初はがんばるのです(笑)。また、僕らは効率的に住宅を量産したいとは、あまり思ってはいません。むしろ、一つひとつの質を問うことこそが、世の中に対する普遍的な建築のメッセージとして、重要だと思っています。
麻魚 確かに、量産はできませんが、私は担当したスタッフが育っていけばいいな、と思っています。構築の仕方を、毎回ゼロベースで考えていくならば、それを成し遂げたとき、感受性の幅みたいなものが、すごく広がります。自力で構築できる能力みたいなものが、身につくのではないかと思います。そのため、スタッフがひとり育つことで、私たちの建築を通して、何か大きなものを産出している、とは思うのです。

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