展覧会コンセプト
How is Life?――地球と生きるためのデザイン
産業革命以降手に入れた生産力を背景に、成長を是としてきた人類の活動は、プラネタリー・バウンダリー*1を超え、気候変動や南北格差をもたらし、声をあげることのできない生物や将来世代を搾取し続けている。その対応策として、成長の原動力となった産業や便利な暮らしを維持しつつ環境負荷を低減させる行動がSDGsとして推奨されているが、事態はより深刻で、持続的成長ではなく成長なき繁栄*2を本気で検討しなければならないところまで来ている。そのためには産業分野だけでなく、暮らし自体を見直し、その構成要素の一つ一つを、地球に負荷をかけない方向に転換していかなければならない。しかし、産業からサービスを買うことに慣れてしまった我々は、自らの手で衣食住やエネルギーを獲得するスキルをもたず、また産業社会的連関による包囲網はそこからの逸脱を容易には許さない。20世紀後半につくられた生産―消費―廃棄の想定を定着し続けてきた構築環境の中に暮らしていると、その想定を疑うことも容易ではない。そこで培われた自画像は、同じ想定に基づく構築環境や暮らしを再生産してしまう。その反復から抜け出して、成長なき繁栄を選ぶのならば、我々はどう生きるか?
建築が人々の暮らしをよりよくすることに奉仕するものであるならば、そうした包囲網を障壁として発見し、挑んでいくことから、建築的営為を始めるべきだろう。その時話し合いのテーブルにつくのは、今ここにいる自分達だけでなく、立場の弱い人、地球の別の場所にいる人、未来の人、そしてヒト以外の生物かもしれない。「How is Life?」という、彼ら、そして私達自身への問いかけを、建築展という形にする試みに、ご期待あれ。
TOTOギャラリー・間 企画展 How is Life?
キュレーター
塚本由晴、千葉 学、セン・クアン、田根 剛
出典
*1 プラネタリー・バウンダリー
Rockström, Johan, et al. "A safe operating space for humanity." Nature, vol. 461, no. 7263, 24 Sept. 2009, pp. 472+.
*2 成長なき繁栄
Tim Jackson (2009). Prosperity without Growth. Earthcan. (ティム・ジャクソン 田沢恭子( 訳 ) (2012). 成長なき繁栄 ―地球生態系内での持続的繁栄のために― 一灯舎)
TOTOギャラリー・間 企画展 How is Life? キュレーター プロフィール
塚本由晴 Yoshiharu Tsukamoto
建築家。1965年生まれ。1987年東京工業大学工学部建築学科卒業。1987~88年パリ・ベルビル建築大学。1992年貝島桃代とアトリエ・ワン設立。1994年東京工業大学大学院博士課程満期退学。1996年博士(工学)。UCLA、Harvard GSD、Columbia GSAPP、Cornell AAP、KADAK他で客員教授を歴任。現在、東京工業大学大学院教授。
©Anna Nagai
千葉 学 Manabu Chiba
建築家。1960年生まれ。1985年東京大学工学部建築学科卒業。1987年同大学院修士課程修了。日本設計、ファクターエヌアソシエイツ共同主宰、東京大学工学部キャンパス計画室助手、同・安藤研究室助手を経て、2001年千葉学建築計画事務所設立、東京大学大学院准教授に着任。2009~10年スイス連邦工科大学客員教授ののち2013年より東京大学大学院教授。
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セン・クアン Seng Kuan
建築史家。1976年生まれ。2011年ハーバード大学大学院博士課程修了。現在、東京大学国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)特任准教授、米ハーバード大学デザイン大学院講師。専門は日本現代建築史。2021~22年『a+u』誌チーフ・エディトリアル・アドヴァイザー。
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田根 剛 Tsuyoshi Tane
建築家。1979年東京生まれ。Atelier Tsuyoshi Tane Architects代表として、フランス・パリを拠点に活動。北海道東海大学芸術工学部建築学科卒業。ヘニング・ラーセン、デイヴィッド・アジャイ事務所を経て、2006年DGT.(Dorell.Ghotmeh.Tane / Architects)設立 (パリ)、2017年Atelier Tsuyoshi Tane Architects設立(パリ)。
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