二つの茶室である。
鉄の廃材でつくられる一つは、1993年に裏千家の茶美会(さびえ)“素”の為につくられ、その後2002年にニューヨークで行われた「The New Way of Tea」展に運び、茶事が行われた。これは僕にとって二つ目の茶室であったが、茶という概念と改めて向かい合った事と、今は亡き伊住政和氏、田中一光氏の記憶と共に、僕にはある重さを与え続けている。
二つ目は、水を用いて今回制作したものである。かつての大学での教え子 香月美穂子の卒業制作からイメージが膨らんだもので、雲や風、雨や雪、木々が色づき、日の光が変わり、時が流れる。そうした流れ過ぎる風景の一瞬を取り出してみたいとでもいうか、あるいは言葉を探して詩が出来るように空間を構成する言葉にこだわったモノとでもいえるのだろうか。