特集4/独学の建築家

島田陽の仕事の流儀

——「タトハウス・北野町の住宅2」以降はいったん収束したものが拡散しているようにも見えますが、自分で意識的に作風をつくろうとは考えていませんか。

島田 まったく考えてないですね。たとえば、最近続けて発表した「比叡平の住居」(10/『TOTO通信』2013年新春号)と「二子新地の住居」(10)と「六甲の住居」(11)を見ても全然違うし、自分の建築の個人史として見ても、とっちらかってる気がします(笑)。
 若い頃、作風が全然違う3人の事務所に行った話をしましたが、当時何を考えたかというと、たとえば妹島さんの平面で石山さんみたいなことをやるとおもしろいのではと思っていたのです。ハイブリッドですね。

——それは独学じゃないとできないですね(笑)。それにしても、現在の島田さんがあるのは偶然、仕事が続いてきたからというだけでは、読者が納得しないと思うのですが(笑)、何かほかに理由はありませんか。

島田 自分がそんなに飛び抜けた才能があるとは思っていないし、むしろ世の中にはもっと才能がありそうなのに、うまくいかない人がけっこう多いなと思うことはあります。ただ、うっすら感じるのは、そういう人は建築をつくる能力が優秀でも、かたくなすぎて状況に対してうまく応答できていないのではないか、ということです。たとえば、うまくいかなかった人にその顛末を聞くと、「クライアントがこんなことを言い出して、ここがこうなっちゃったんだよ」と言ったりする。そういう説明をされても、ある種、殺意を覚えるというか(笑)。

——よくもそんなことが言えるな、と(笑)。

島田 少なくともぼくは「やりたいことがあるのにできない」というのは、あんまりないんです。クライアントに「やりたいことはなんですか」と聞かれても、「いや、そんなもん、ないです。あなたと一緒にやりたいことを探していくんです」という話です。いろんな諸条件をポジティブに統合する——それが建築家の仕事だとぼくは思っています。

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