特集2/独学の建築家

最初の仕事「内海の家」

——「内海の家」はどういった経緯で依頼がきたのでしょうか。

前田  祖母の家が、福山市内から1時間くらいの内海町というところにあったので、そこにしばらく住んでいたのですが、家の前に立てた営業の看板を見て、内海町に家を建てたいという人が訪ねてきたのです。後々聞くと、建てることを決心していたわけではなかったのですが、こちらのプレゼンの熱がすごかったので、それに押されて決意した、と言っていました。確かに、必死でしたからね(笑)。

——「内海の家」は切妻の瓦屋根。「アトリエ・ビスクドール」(09)などの今のスタイルとはだいぶ異なりますね。

前田  瓦は避けたいという気持ちも少しはあったのですが、小さい頃から祖母の家にいくとよく遊んでいた場所で土地柄もよく知っていましたから、現代的な建築はふさわしくない、ということを肌で感じました。ただ、せっかく瓦を使うならしっかりしたものにしたいと思い、産地や種類・特性などを調べて、淡路のいぶし瓦を使うことにしました。

——土地柄上、「内海の家」は少し伝統的ですが、当時から現代的な建築を志向していたということでしょうか。

前田「現代的」とはいっても、現場監督をしているときから、近所や京都・奈良の古建築を見てまわり、光や素材などが自然と寄りそうあり方が本当によいな、と思っていましたので、古い日本建築がもっているエッセンスを吸収した現代建築のあり方を考えています。今でもひとつのテーマにしている半外部のような空間も、たとえば光浄院客殿の広縁を連想しながら考えていますし、古建築の気持ちよさはいつも意識しています。それと日本建築と通じる植物は、育った環境のせいか、昔から関心をもってきました。「内海の家」では、グッドデザイン賞(03年度)をとることができたのですが、数十種類の植物を記載した外構図が評価されたそうです。


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