特集2/独学の建築家

再び建築家を志す

——そうした現場経験のなかで、今一度設計者、あるいは建築家になりたいと思ったきっかけはなんだったのでしょう。

前田  職人からの影響です。独学とはいってもぼくの師は職人なんです。この「後山山荘」を手がけた建具屋さんにも現場監督のときに出会いましたが、仕事の内容をとことん突きつめて、後々のために手間を惜しまない姿勢に圧倒されました。そういった職人たちを見ていたら、建築がまた好きになっていったのです。どうせ埋めてしまう地中梁を見ていたときも、「美しいな」とかデザインや空間のことも現場で考えるようになってきて、結局また建築雑誌も読むようになっていったんです。ちょうど一級建築士をとった頃に、どこかの建築家のところに転職しようか、という想いがまた芽生えていきました。

——建築が好き、ということなら、そのまま現場監督として建築に携わる道もあったかと思いますが。

前田  他人が描いた図面で仕事をしてもこんなに楽しいのだから、自分が描いた図面で建築をつくったら、もっと楽しくなるのではないか、と思いました。他人の設計の施工図を描いているとき、こうしたらもっと気持ちのよい空間になるのに、などと感じてしまい、現場監督をしているときにも空間のことを考えるようになっていましたから。また、施工図を描けるし積算ができるから、設計図も描けると思い、設計事務所に勤めていないとはいえ、自分でできると考えました。すでに結婚もして、子どもも生まれるところでしたから、かなり悩みましたが、妻が後押ししてくれました。ちょうど「内海の家」(2003)の依頼もきていましたから、28歳のときに独立しました。


>> 「内海の家」
>> 「アトリエ・ビスクドール」
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Movie 「ヒメヒャラの森」

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