
吉村さんは、法学者ローレンス・レッシグの著書『CODE——インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社)に強い影響を受けている。たとえば、インターネットをはじめとした高度な技術をもった社会における「コード(アーキテクチャ)」の重要性に共感を覚えたそうだ。インターネット上には、実社会での法規と同じくらいの規制力をもつ仕組みとして「コード」があるという。その建築への応用として、吉村さんは「デ・コード」というフィールドワークを行ってきた。これは、法規を踏まえて、都市や建築を読み込むことで、その形成過程を観察する試みであり、その結果は、「超合法建築」と名づけられた、法規をまじめに守ったうえで、周囲とは違う魅力を備えた建築物の発見にもつながっている(『超合法建築図鑑』吉村靖孝著、彰国社)。
この「デ・コード」の活動から、吉村さんの法規から建築を解剖する目線はよく知られることとなったが、続いて吉村さんは、レッシグが提唱する「クリエイティブ・コモンズ(CC)・ライセンス」という概念にも着目した。これは、インターネットの秩序のために、レッシグが「コード」のひとつとして提案した著作権のルールであり、作者による著作権の適用範囲の意思表示である。従来、著作権には、すべての権利を主張するか、すべての権利を放棄する、というふたつしか選択肢がなかったが、CCライセンスでは、クレジットを明記した再配布を許可したうえで、非営利や改変禁止などの条件を設定することができる。その条件は「コモンズ証」というわかりやすい記号で表示できるようになっており、インターネット上のみならず、紙媒体の出版物にも採用されはじめている。この概念の画期性を受けて、吉村さんはCCライセンスの建築への導入を検討したのであるが、吉村さんがもともと考えていた建築物の著作権に対する問題提起が、その導入への意志を後押ししたという。
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